How to

【写真撮影の基本 Vol.03】チームで写真を撮ってみる!

西村優祐

西村 勇祐

UPDATE 2019.10.09

『カメラマン』という肩書きで、仕事ができるようになって数年。正直に言うと、それまではどこにでもいるような、ただのカメラ小僧でした。ほんの少しカメラマンに近づいたのは、出版社に勤めていた前職で、雑誌をつくっていたときのこと。人手が足りず、「カメラを持っている」というだけで、営業職だったにも関わらず、自分で撮影までを担当するようになったのです。いま思えば、それもまだカメラマンの“ような”ものでした。そんな僕が、いまではようやくカメラマンです。もちろんまだまだ学ぶことが多くありますが、これまでに得た知識や経験を、少しずつ整理していこうと思います。

計3回からなる基本編の最終回のテーマは『チームで撮ること』です。(1回目はこちら

INDEX

客観的な意見が視野を広げる

個性だけでは成長はしない

師匠の存在が道を拓く

あなたではなく、誰かのための写真である

僕が写真を撮るとき、そこには高確率でディレクターやデザイナーが存在します。もちろん、好きなように撮影をして楽しんでいた時期もありました。しかし、仕事となったら、好きなように撮れることの方が稀です。超有名カメラマンでさえも、ある程度の制約や指示のもとで、目的に沿った写真が求められます。

正直に言うと、最初の頃は、こういった状況で撮影することを、「なんて窮屈なんだ」と思っていました。
でも、実際はむしろ逆なんです。

自分の「好き」を、相手も求めているとは限りません。

ディレクターが全体のコンセプトや目的を明確にし、それに合わせたデザインがある。そしてカメラマンはそれにマッチした写真を撮る。
それぞれの領域が明確であればあるほど、自身の仕事の集中できる環境になります。また、それぞれに意見を出し合うことで、より高い品質を確保することも可能です。

いい写真が出来上がれば、被写体も自分も嬉しいですよね。

要は客観的な意見をもらうことで、ひとりでは思いつかなかった写真ができあがるということ。
僕が依頼される撮影だと、写真は目的を達するための手段や素材でしかありません。
であれば、同じ目的を持ったチームで作り上げていく方が、よっぽど楽なんです。

骨だけでは、生きていけない

あくまで個人的な見解ですが、カメラマンには少なからず個性とかクセがあるように感じます。言い換えれば、本人の好み。
プロとアマに、機材での差がほとんどない現代においては、それこそが、カメラマンの強みになりえると思います。

しかし、その個性だけで勝負できるカメラマンは、ごく一部でしょう。
おそらく、料理専門であっても、スポーツ専門であっても、ブライダル専門であっても、個性を軸にしつつ、幅広い写真を撮れる方がよりいい。
当然、僕のような商業カメラマンであれば、より顕著です。「これ!」といった専門領域をもたないからこそ、いろいろな撮り方ができなくはいけません。

はじめての街に行くと、普段は撮らない写真になることが多い気がします。

そういった状況になると、ときに個性が邪魔をします。自分の中にある正解だけで「こなそう」としてしまうのです。
どんな業種においても、あることでしょう。「こうやっておけば問題ない」という安牌を選ぶとき。

それはきっと、間違いではないのだと思っています。その時点では、それも正解です。
でも、それだけでは成長はしません。

その写真は、本当に正解なのか?

「もっとこうしたら?」「こんな雰囲気を出してみよう」「これまでとは逆のアプローチで」とか、ちょっとした冒険が経験値になります。

そして、それを助けてくれるのが、自分以外の誰かです。
別に経験豊富なカメラマンである必要はありません。彼女でも友達でも大丈夫。いつも通り撮ってみたら「もっとかわいく撮ってほしい」と言われるかもしれません。
つまり、ダメ出しですよね。その写真では納得できないわけですから、他の方法を探ります

あくまでチームであることが大切。それを全員が共通認識としてもっていないと……

そうしているうちに、これまでの自分の写真とは、少し違ったものが撮れてくるはずです。

自分よりも高みにいる存在から学ぶべし!

カメラマンという職業を目指す人の多くは、先輩のカメラマン、いわば師匠のもとで学ぶことが多いでしょう。突然、カメラマンになった僕にも、そうした「師匠」と呼べる存在がいます。

それが、ライターとして参加した案件で、写真を撮っていた木村周平さんです。(合同会社ワンダースリー
カメラマンとしての経験も浅く、知識もない僕を、幾度となくご自身の仕事の現場に誘ってくださいました。
またそれだけでなく、セットの組み方、ロケの仕方、細かな設定、機材の扱い方、現場での立ち居振る舞いなど、惜しげもなく僕に伝授してくれたのです。

写真にも、さまざまな質感が求められます。

はっきり言って、木村さんがいなければ、僕はずっとカメラマンの“ような”存在だったと思います。

この連載のVol.01とVol.02で紹介したのは、個人でできることでした。
それも無駄ではないのですが、たった1回、先輩の現場に出たときの方が、圧倒的に学ぶことが多かったのです。
これまでやってきた「量をこなすこと」や「真似すること」で生まれた疑問が、一気に解けたような感覚でした。

写真のトーンにも流行りがあるものです。

きっと、カメラをはじめたばかりで、その道に進もうと思っている人の中には「自分だけでなんとかなる」と思っている方も多いでしょう。
でも、仕事にするのであれば、なおさら師匠の存在は重要です。たとえば、撮影の現場にも、暗黙の了解があります。それ、誰かに教わることなく、はじめから知れますか? 
また、自分にとってはじめての撮影現場も、クライアントにとっては、何十回、何百回とやってきた1回かも知れません。
期待を込めて依頼をしてくれて、ギャラを払ってくれる相手に対して、自己満足の知識や経験だけで立ち向かうのは失礼ではないですか?

テスト撮影では奥さんに協力してもらいます。ぶっつけ本番ほど怖いものはありません。

もしも周りに、プロカメラマンの知り合いがいるのであれば、なりふり構わず、同行を申し込みましょう。
僕も、はじめたお会いした木村さんに「荷物持ちはできます!」という無茶苦茶なお願いをしました。
それを受け入れてくれた器の大きさには、感謝してもしきれません。

このコラムも、「誰かに見てもらう」ためのものなのです。

「誰かに写真を見てもらうこと」の行き着く先は、「誰かの写真(を撮る現場)を見ること」なのかもしれません。

さて、次回からはもう少し具体的な内容を予定しています。
僕が使っている機材の説明や、実際に撮影した写真の解説など。

では、またお会いしましょう!

西村優祐

西村 勇祐

今回もすべてプライベートの写真ばかり。時期もさまざまですが、とりあえず猫を見つけたら撮るようにしています。使用機材は、「EOS 5D MarkⅢ」や「コンタックスT2」だったと思います。レンズは「EF24-105mm F4L IS USM」か「EF50mm F1.2L USM」ですね。

EF50mm F1.2L USM

183,150(税込)

レビュー

50mmの単焦点レンズ。キヤノンの場合、「L」という文字が入っているものが、最上級グレードのレンズです。僕が持っているレンズの中で、もっとも使用頻度が高い1本でもあります。

参照元 https://store.canon.jp/online/g/g1257B001/

https://store.canon.jp/online/g/g1257B001/