社長コラム

【月刊あめのもり】2020年2月「I’m a Interviewer!」

雨森武志

雨森 武志

UPDATE 2020.02.29

いや〜、逃げる。逃げますね〜、2月。本当に早いわ。なかったかのよう。
先月から変わったといえば、長きに渡って長女の笑顔だったiPhoneの待受画面が、
ニパッ!」っと笑った長男の写真になったことくらいです。

さぁ、4年に1度だけの2月29日。今月のフリーコラムを書いてみましょう。

1年で80人。ここ10年では、500人!

今日のお話は、親交のある株式会社BHFの廣瀬社長の、こんなツイートから……。

これを見て、ちょっとした「!」がありまして。おお、なるほど。
『インタビュアー』なる職種があるんですね。

僕は廣瀬社長がやっている事業をわりと細かめに知っているので
(実は弊社サイトの対談コンテンツで取材しました。来週公開予定)、
おそらく彼がここで言っている「インタビュアー」っていうのは、
映像制作における、司会的な役割というか、問いかける側というか、
主にそういうポジションを指しているんだろうと思っています。

僕の場合は、原稿を書くためにのインタビューを、たくさんやっています。
ちなみに弊社では「インタビュー」という言葉はあまり使わず、「取材」と言うことが多いですね。

2019年に僕が取材をした本数は、正確には分かりませんが、確実に80人を超えていて、
これって日本でもトップクラスの数なんじゃないかなって思っています。
(新聞や週刊誌の記者のような人は除いて、僕より取材をしたコピーライターっているかな……)

弊社の案件ではなく、別の制作会社から取材だけを受けているものも多いので、
すべて紹介できるわけではありませんが、例えば、専門学校の学生にお話を聞いたり。


ESP STUDENT BANK

美容外科で働くスタッフの方々にお話を聞いたり。


聖心美容クリニック リクルートサイト

弊社で運営するメディアで連載をしていたり。


リノスタ連載コラム『編集長ゴヨウタシ』

自社サイトでも、対談コンテンツをやっていたり(これは仕事といえるか、微妙ですが……)

『社長に訊けば、社長に効く。』Vol.01 株式会社ノティオ 代表取締役 山田真澄氏
『マイメンときどき、マイガール』Vol.01 いるかM.B.A. 代表 田中裕久氏
『アイタイスとゆかいなお客さまたち。』Vol.01 東葛テクノ株式会社 秋元隆宏氏

極めつけは、50社以上の経営層に話を聞く(これで数を稼ぎました)という案件があったり。

これはWebではなく紙の仕事なので、きちんと紹介はできませんが、何枚かここにはっておきましょう。
「協同組合 資材連」という組織に加入する企業・団体すべてに取材を行い、
それぞれの強みや独自性を言語化していくというプロジェクトでした。

ひとつの案件で、50社以上の取材・撮影を行うというのは、
僕がこれまでに手掛けたお仕事の中でも、最大規模のものでしたね。

取材に費やした期間は、なんと半年。130ページを超える冊子のコピーを、すべて書きました。

また、これらに加えて、たとえば「企業理念の構築」に向けた取材みたいな、
世の中に発信される記事を作成するためではないものも多々ありますし、
弊社のスタッフが取材をした原稿もすべて目を通して朱を入れるので、
そんなものを含めると、1年でゆうに100人は超えています。

この「1年で80人以上」という数は、僕の中でも極端に多いのですが、
そうでなくても、これまで毎年30人くらいは取材をしてきました。

この10年は、ずっとそんな生活なので、もう400〜500人くらいには取材をしたでしょうか。

そうです。立派なインタビュアーなんです。僕。廣瀬社長、憧れてくれるかな?(笑)

急に切り替わるマインドスイッチ

では、取材の仕事が好きかと言われると、まったくそうではなくて、
ここ数年は、自分からそんな仕事をとりにいったことはなく、
僕の指名で来ることがない限り、部下にやらせるか、断っているのが現状です。

それは何故か。単純に人見知りだからです。あ〜、情けない。
でも、治りません。39歳で治っていないので、一生、これと付き合うんでしょうね。

ぶっちゃけ、初対面の人と話をするのが、楽しくない。
もっと言えば、苦痛。できれば、そんな場に出て行きたくない。
今、いきなり目の前に“広告の神様”が現れて「取材の仕事、もう一生ないよ」と言われても、ぜんぜん構いません。

……なんて思っている僕が、この10年で500人近いの方々の話を聞いて、原稿を書いてきたんです。
変な話ですよね。ま、お金、もらえるんでね。食っていかないとダメですし。

昨年出た、ザ・ブルー・ハーブのアルバムに入っている「阿吽」という曲に、こんな一節があります。

こちとら出たがりでもない照れ屋な 人前緊張しいの口下手さ だけど不思議1回目からできてたな

ザ・ブルー・ハーブのことを知らない人に向けて、あえてここでは説明はしませんが、
あのボスでさえ、照れ屋で、緊張しいで、口下手だそうです。
うん。めちゃめちゃ分かる。僕も割と同じ気持ちです。

取材が始まる直前まで、かなりブルーなんですね。上に書いた通り、好きな仕事ではないので。
でも、そんなネガティブな気持ちは、レコーダーを回した瞬間に、スッと消えてしまいます。

同じく「阿吽」の中のリリック、上で引用した部分のすぐ後に、こんな風に歌われています。

どこに行ったって面白い人はいて 生き様 伝えていく語り部になりてえ 書いても書いても書き足りねえ

そうです。別段、好きではない取材の仕事。でも、話を聞きはじめた瞬間に、

「この人のことを、もっと知りたい」「この人のこと、多くに伝えたい」

という気持ちが芽生え、それがどんどんと大きくなって、
はじまる直前まで、死んだ魚のようだった僕の目は、
取材が終わり、テレコを止める瞬間まで、キラキラと輝き続けていることでしょう。
終わったときには「天職だ」とさえ思っているかもしれません。

そしてまた、次の取材の直前には、死んだ魚にもどります。

僕にとって、取材とは、そんな不思議なお仕事なんです。

当日&原稿作成で、グッドインタビュアーを目指せ!

さて、そんな中で、今日はちょっとだけ、取材の心得みたいなものを書いてみようかなと思っております。
はい、ここからがやっと本題です。
とはいえ、もう前段の部分でだいぶ尺をとってしまったので、めちゃめちゃ簡単に。

僕がやっている取材の仕事は、大きく分けて、2つの工程で完成します。

1:取材当日(お話を聞く)/2:原稿作成(文字にする)

この2つ、担当が分かれる場合もあるみたいですね。(特に東京ではその方法が多い?)
お客さんによっては、別々の項目として見積もられる時もあります。

僕の場合は、両方ともやりますけどね。

1:取材当日

これは以前、わりと似たような記事をスタッフが書いてくれています。
まずはそちらを参照していただきましょう。

急にはじまる特訓……。(1)
急にはじまる特訓……。(2)

この中の内容と重複しますが、大事なのは、やはり「会話を楽しむ」という点でしょうね。

インタビュアーであるこちら側が楽しむことで、インタビュイーに心の扉を開いてもらう。これがポイント。

そのために重要なのは、最初の約5分です。ここで勝負は決まると言っていいでしょう。

インタビュイーに……

「あ、この人は、私の話にすごく興味を持ってくれているんだ」

「この人に、自分のことを話すの、楽しいな」

と思わせなければいけません。

だから、最初の5分は、多少おおげさなリアクションをとったり、
まったく面白くないボケをかまされてもしっかりと笑ったり。

また、僕の中での必殺技が一つあります。それは

「ここぞ!」というところで、「思わず出てしまった」みたいな感じで、大阪弁を出す。

というもの。そこまでは、当たり前ですが、敬語と標準語で接するので、かなり効き目があります。本気で感動している感というか、こちらの心が動いている感が出るんですよね。

文字起こしをしてくれるスタッフも、僕の大阪弁作戦の効果を目の当たりにして
「あの作戦は、ずるいですよ」と言ってくれます。ま、どれも、あくまでさり気なくやらないとダメですけどね。

さらに、「会話を楽しむ」を阻害する可能性のあるものは、できるだけ排除します。
たとえば「メモをとる」もしません。「質問リストをあらかじめ送る」みたいなこともしません。

「もっと知りたい」「もっと話したい」

互いのこの気持ちを高め合いながらお話ができれば、取材当日は成功といえるでしょう。

2:原稿作成

「じゃあ、取材当日は、楽しくワイワイとお話さえできれば、それでいいの?」
「そんな、合コンみたいな感覚で大丈夫?」と聞かれるかもしれませんが、
答えは、「ほぼ、イエス」です。あとは、神編集&神演出する技量があれば大丈夫。ライターとしての腕の見せ所ですね。

とはいえ、上手な原稿作成に関しては、変数や方法論、チェック項目が多すぎて、
連載にでもしないと書ききれないので、こちらも今日はポイントをひとつだけ。

これは、専門学校でライティングを教えていたときも、学生たちによく伝えていたことですが、
取材原稿は「自分の言葉で書く」ということを念頭に置かなければいけません。

実際にお話を聞いているということもあって、
どうしてもインタビュイーが放った言葉をメインに構築しがちですよね?
だって、そのためにテープを回しているわけですし。

でも、違います。自分の言葉で、書きます。

テープを聞き、インタビュイーが言いたいであろうことを理解し、それが一番伝わる言葉を、自分で探して書くのです。

インタビュイーが、どういう言葉を使っていたかは、基本的には関係ありません。
ライター自身が、自分で物語を構築するのです。

たとえばこれ。弊社サイトの対談コンテンツの記事を読んでくれた読者の方が、
わざわざ引用までしてツイートしてくれていますが、
この取材の中で、池谷くんは「逆説的」なんて言葉はいっさい発していません。
その言葉を使うことで、よりスムースに意味が伝わるから、僕が勝手に入れました。

そういった編集、演出、調整を、大小無数に入れ込むことで、より読みやすく、より伝わりやすい原稿ができあがります。

文脈とはまったく関係ないですが、目の保養に、池谷くんの画像をはっておきましょう(笑)

すこし話は変わりますが、みなさんは『人志松本のすべらない話』を知っていますでしょうか。
今や知らないという人の方が少ない、国民的バラエティ番組と言っていいでしょう。

あの番組を見ていると、こんなこと、思いませんか?

やっぱり芸人さんの身の回りには、おもしろい出来事がたくさん起きるんだな……。

彼らは、サイコロで自分の名前が出るたびに、誰でも笑えるような実話をいくつもいくつも話しています。
そんな風に思ってしまうのも、分からないでもない。

しかし、当然ながら、そんなことはありません。

話を聞いた人が、思わず笑ってしまうようなおもしろハプニングは、
芸人さんにも、一般人の我々にも、同じ数だけ起こっているはずです。

要は、身の回りに起こったその出来事を、
どの角度から切り取って、どんな構成で、どんな言葉を使って伝えるか。
そのスキルにおいて、一般人と比べて、芸人さんが秀でているだけなんです。

あの番組で芸人さんたちが話すトークは、「すべて実話である」という前提ですが、
その実話を、言葉に変換して、人に伝えようとする時点で、ある種、フィクションになるのです。

取材における原稿作成も、それと同じです。
当然、インタビュイーから返ってくる答えがあるので、その本質部分を大きく変えることはできませんが、
それを、どういう言葉で、どういった物語にするかは、原稿をつくるライターさん次第。

もし、出来上がった原稿を読んだ結果、インタビュイーが魅力的な人物に見えたのであれば、
それは、実際にその人が魅力的というよりも、原稿をつくった人の手柄なのです。

もちろん逆もしかり。

いまいち魅力的に描かれていないのであれば、その人自身に魅力がないのではなく、
100%、ライターさんの落ち度に他なりません。

だから、ガンガン編集、演出する、というのが僕のやり方。

僕の取材音源を聞きながら文字起こしをした人は、出来上がりの原稿を見たらびっくりすることでしょう。
使われている言葉から、話されている順番から、何から何まで、ぜんぜん違いますから。

もう1回いいます。
大切なのは、「その人がなんと言ったか」ではなく、「その人が何を伝えたいか」です。
それを理解し、それが一番伝わる物語を、自分の言葉を使って作るのです。
それがコピーライターのお仕事。

その人を、その人の取り組みを、商品を、サービスを、
とことんまで魅力的に伝えるための原稿だけを残し、名前も告げずサッと消えていく。
それが我々コピーライターの美学なのです。

ま、もちろん“喋った、そのまま感”が好きな人もいるので、究極でいうと、好みではありますけどね。

はい、今日はここまで

新型コロナウイルスが猛威を奮っていますね。みなさん、対策はバッチリですか?

厚労省が発表した内容を見ていると、「次亜塩素酸」も効果を発揮するとあります。

新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

そうです。次亜塩素酸といえば、こちら。弊社でもお仕事で携わっている「bclas」です。

ちょうど先週、担当のスタッフと話していると、やはりものすごい数の注文が入っているとのこと。

マスクは売り切れますが、次亜塩素酸水は、基本的には半永久につくれるそうなので、
対策を講じている方は、ぜひbclasを選択肢に加えてみてください。

3月は、現在「coming soon…」まみれの弊社サイトを、ギュギュっと進めていきます。
いろいろなページが出来上がっていくので、楽しみにしていてください。

ではまた来月に。

Editor’sNote

雨森武志

雨森 武志

五反田に小さなオフィスを構えるブランディング&クリエイティブカンパニー、アイタイスの代表です。