月刊かわしま

【月刊かわしま】2022年6月「Goodbye、小説家。Hello、コピーライター」

川島優大

川島優大

UPDATE 2022.06.20

みなさん、こんにちは。アイタイスの川島です。

自分の書いた文章がすこしずつ世の中に出るようになって、
あらためてコピーライターになったことを実感するようになりました。

かつては小説家になりたかった自分が、いま別のカタチで言葉に関わっています。
似ているようなこの2つ。実はまったく異なるものだということ、ご存知ですか?
今回はその違いをテーマに、「月刊かわしま」を進めていきたいと思います。

物書きなんてどれも一緒? いや違う。

物語を考えて、文章を綴って生活したかった。
あわよくばヒット作を何回も出して、巨額の富を手に入れたかった。

こんな浅はかな気持ちが、僕が小説を書きはじめたきっかけです。
名誉を得る手段としての「将来は小説家になりたい」という夢。今思うと格好悪すぎますよね。
しかしながら太宰治も不純な動機から作家になったそうなので、「自分もなれる!」なんて過信していました。

夢を実現するために学生時代にはSNSで作品を投稿したり、賞レースに参加したりもしましたが、「センスと努力と覚悟」がない僕は、どれも中途半端で終わってしまいます。
そんなことをしている間に就活に追われて、紆余曲折あってコピーライターになっていました。

「言葉を書くことで、お金がもらえる」

そういう意味では、コピーライターという仕事は小説家と同じです。やりたいことができて、
さらにあわよくば名誉も獲得できるかもしれないと、淡い期待を抱いていました。

社会人になる時も浅はかな考えのまま、働きはじめたのを覚えています。

大学時代熱中していた執筆活動。なぜかアカウントが消されました。悲しい。

アイタイスのライターとして、コピーライティングをするようになった僕は、
頭の中にある自分の辞書を必死にめくって、言葉を綴る毎日。

小説と同じく、すこし曖昧に。読み手が想像で補うように。

こんなことを思いながら原稿を書き進め、社長である雨森さんに自信満々で提出していました。
しかしながら返ってきたのは修正の指示だらけで、真っ赤っ赤の朱書きです。それはそうなんですよね。ちょっと前までド素人だったんですから。でも想像以上の量に納得ができませんでした。

上司だった西村さんに理由を聞くと、返ってきた答えはひとつ。

「ドラマチックに書きすぎなんだよね」

ここが小説とコピーライティングの大きな違い。
基本的に広告物におけるコピーライティングは、芸術ではありません。誰にでもすぐに分かってもらえることが大切です。
必要以上に自分の世界を広げないようにすることが、当時の僕にとって難しく感じました。

どうしても今までの小説の書き方に慣れてしまって、読者に理解を任せそうになる。
趣味レベルながら小説家のプライドが出ていたんです。(捨てることができませんでした……。)

そんな中、週に1度開催される勉強会で、雨森さんからコピーライターの極意を教えてもらいます。
それはこの仕事をする上で、絶対に忘れてはいけないことでした。

「アーティストではなく、クリエイターであれ」

雨森さんがサラリーマン時代に上司から伝えられたこの言葉。自分のことを言われているかのようでした。詳しくは雨森さんがコラムで書いているので、こちらから。

あくまで僕たちは代弁者です。大切なのは、クライアントの思いをカタチにすること。僕の思っていることなんて、二の次、三の次なんですよね。コピーライティングは自己表現の場ではありません。自分を認めてもらうために書くなら、とんだお門違いです。

コピーライターの仕事は「代わって書く」ということ。日本語なんて誰でも書けるのに、それを任せてもらえるなんて贅沢な仕事です。だからこそ責任を持って言葉を選ばなければならない。そのコピーを見た人の心を動かすことが僕たちの使命なんです。

はじめて戻された朱書き。これは上司である西村さんからのものでこの後、より厳しい雨森チェックがある。

この勉強会以降、原稿に着手する時の心持ちが変わりました。なにを伝えたいのか。どうやって伝えたいのか。誰に伝えたいのか。これらを考えるようになると「小説」と「コピーライティング」はぜんぜん違う。その区別をつけるのにまだ難しさはありますが、それよりも面白さが勝つ毎日です。この難しさを感じなくなった時、コピーライターとしての扉がひとつ開く気がします。

まだまだ学ぶことばかり。

さて、あれから月日が経った今、修正の量が減ったのかと言われるとそうではありません。むしろ増えて返ってくることもあります(笑)
今心がけているのは、まっさらな気持ちで自分の書いた言葉を読み直すこと。修正をすこしでも減らし、最終的にはゼロにするのが、僕の目標です。

そして繰り返しになりますが、覚えることがどれだけ増えても、
クリエイターであることだけは忘れてはいけません。
これからもエゴを出さずに、クライアントが満足するコピーを書いていきたいと思います。
それではみなさん、また来月に。

川島優大

川島優大

もう一度小説を書こうかなと思い、携帯に残してあったネタ帳に目を通しました。直近のことなのになぜか恥ずかしく感じてしまったので、執筆を再開するのはしばらく先の話になりそうです。