こんにちは、雨森です。
メルマガから来ていただいた方は、そこでも同じ話題ばかりでしたが、
アイタイスでは、2月1日から新卒の新しい仲間を迎え入れました。
まだ大学の卒業式すら迎えていない彼は、
当然ながら社会人経験もなければ、広告物の制作に携わったこともありません。
そんな中、彼がはじめてアイタイスの事務所に来た2月1日より、
毎週火曜日の9時半から行われているのが、勉強会です。
僕が担当しているのは、最初の30分。
残りの1時間半が直属の上司となる西村の時間になります。
ということで今日は、すでに4回が行われた勉強会で
僕がどんなテーマで話をしたかを、簡単に紹介してみましょう。
2月1日 第1回勉強会「クリエイターであれ」
これまでも部下を雇う際には、必ずはじめにこれを伝えてきました。
また数年前まで専門学校で講師をしていましたが、その時にも、
同じくはじめの方の授業でこの話をしたはずです。それくらい大事な考え方。
それが「クリエイターであれ」ということです。
これは「アーティストになるな」と同義ですね。
ちなみにもう15年以上前、僕が地元の大阪で
サラリーマンとして勤め始めた時に言われたのもこのことでした。
あんたがどう思ってるかとかは、どうでもええねん。
とても厳しかった上司に何度も言われました。
つまりは「クライアントにとって、どうかだけを考えろ」ということ。
自分がやりたいように表現をして、それが評価されれば評価された分だけ
お金が入ってくるし、逆に評価されなければ、バイト生活をする。
すごく単純化していますが、極端に言えば、アーティストとはそういう表現者であり、
我々のようなクリエイターとは、まったく違う存在であることが分かります。
つまり小説家とコピーライターはぜんぜん違う職業だし、
どれだけ売れて、どれだけの印税が入ってくるか分からないままにCDを出すミュージシャンと、
企業からのCMソングの発注を受けて、先にギャラも決定した上で制作を行うクリエイターもまったく違います。
つまり我々クリエイターは、クライアントが毎日一生懸命に自分のお仕事をして
それによって稼いだお金をもらうことで、表現をしているわけです。
そう考えると、「自分はこう表現したい」といったエゴを
少しでも仕事に介入させるなんて、そんなおこがましいことはありません。
それをやっていいのは、「大先生」と呼ばれるような圧倒的な実績を持ったクリエイターか、
すでに信頼関係を築いているクライアントに「お任せします」と言われたときだけ。
クライアントのビジネスゴール。
その1点に向かって、クリエイティブワークに臨むのが、我々の仕事やで。
初日にはそんなお話をしたと思います。
2月8日 第2回勉強会「アイタイスのルール」
ここではアイタイスで大切にすべき価値観として、
以前に新しいスタッフを迎える時に伝えた5つと、
今回新しく追加した5つを守ってもらうように伝えました。
前者に関しては、こちらのコラムを参照してください。
そこで紹介されている5つを、もう一度挙げておきます。
1:メモをとる
2:明るく元気に
3:どんどん相談する
4:スケジュールを守る
5:体が資本
そして今回追加したのは、以下の5つ。
1:品質にこだわる。
2:見た目を大切に。
3:日々、整える。
4:チームプレーを意識。いいパスを出す。
5:成長・変化しつづける。
この中で特に「4」あたりはだいぶ強調しました。
我々が従事するクリエイティブワークは、徹底したチームプレーです。
案件の最初から最後までを1人でやりぬく、といったプロジェクトは皆無で、
言ってみれば、連携してばかり。
連携するということは、パスを出してばかりだし、
パスを受けてばかりです。
特にそのパスの出し方がとても重要だというお話。
それにアイタイスにいれば、コピーライターとして成長しつつ、
必ずやディレクションの領域にも踏み込みます。
となると、日々の業務は、パス、つまり指示を出してばかりになります。
しかも現状のアイタイスでは、外部のクリエイターを使うことが多いので、
余計に上手なパス出しができるようにならないといけません。
最初のうちはピンとこないテーマかもしれませんが、
この5つを、しっかりと刻み込んでおいてもらいたいと願います。
2月15日 第3回勉強会「業界の仕組みとワークフロー」
この日はアイタイスの主な事業領域であるブランディングとクリエイティブの案件が、
どのように発生し、どのように納品へと向かうのか、みたいな話をしました。
クライアントから直接発注を受けることもあれば、代理店を挟むこともある。
また案件マルっと受けることもあれば、一部分だけをお願いされることもある。
この業界にいれば当たり前ですが、仕事の形式は本当にさまざまです。
そんな中で、最高のパフォーマンスを見せ、
クライアントから選ばれるために意識すべきことを、この日は3つ挙げました。
1:専門性を高める。
2:いいパスを出す。
3:目的を忘れない。
「1」で語られている「専門性」というのは、特定のカテゴリ・ジャンルの話ではなく、
例えば「コピーライティング」という自分たちが担う領域の品質を高める、という意味。
というのも、アイタイスでは、例えば「医療」とか「アパレル」とか「不動産」など、
ジャンルや業種などに特化して仕事をしているわけではないので。
「2」のパスの話は、一つ前の週でもあった内容ですね。
この時、一緒に話を聞いていた新人ではないスタッフから
「パスというのは、上流から下流に向けた、いわゆる「指示」の時だけ?」と質問を受けましたが、
それはそうでもありません。
たとえば出来上がったコピーを、発注を受けた会社のディレクターに納品する際に、
どんな説明を添えるか、みたいなところもパスの出し方です。
僕もデザイナーから何の説明もなく、出来上がったデザインを
ポコっと投げられた時には「あ、こいつはダメだな」と思います。
できあがったコピーやデザインに、どういう意図や工夫があるのか、それを上手に伝えなければいけません。
そして「3」が最も大事な話。
ここで言う「目的」とは、一番大きな目的、つまりクライアント(発注先の大元)が
どういう目的でこの案件を進めているのか、ということをきちんと把握し(上流の人がきちんと説明し)
それを、下請けだろうが、孫請けだろうが、ひ孫請けだろうが、やしゃご請けだろうが……(以下、エンドレス)、
つまりどれだけ末端の方で仕事を受けていようが、大元の目的のために動く、ということです。
これが意外と難しくて、僕が仕事をしていても、
「あ、このクリエイターは、一番近いところにいるディレクターのOKをもらうことが目的になってるな」なんて思うこともしばしば。
大元のクライアントの大目的を果たすためなら、
間にはいっている会社やディレクターの指示も無視する。
僕はそんな気概を持った人と仕事がしたいし、実際にそういうクリエイターを選んでいます。
これは新入社員用に伝えた内容ですが、フリーランスの人なども意識するといいかもしれませんね。
2月22日 第4回勉強会「コピーライターとしての心構え」
先週になってやっと実際の業務に関わる部分、つまりコピーの書き方の話まで来ました。
とはいえ、細かい手法に関しては、スタッフの西村が教えているので、
僕が担当したのは、もうちょっと概念よりの“心得”みたいな話。
ここでは3つの話をしました。
1:専門性を高めろ。
2:想像力を喚起しろ(説明的になるな)。
3:読まれないことを前提に書け。
「1」は過去2回でも話してきたことです。
繰り返しになりますが、ここでいう「専門性」っていうのは、扱うジャンルなどの話ではありません。
メルマガに書きましたが、コピーライティングは、プロとアマチュアとの境界線が曖昧な世界。
専用のソフトや専用の機材が必要なクリエイティブ業界の他の職種と違って、
いわば素人でも書ける「日本語」を、高いお金で売る仕事です。
そのことを常に念頭に置かなければいけません。
つづいて「2」もとても大事。
人間には無限の想像力があり、そこを活用すれば、伝わる量、質、ともに最強です。
特にコピーは“絵”がないので、読者に想像をふくらましてもらいやすいもの。
たとえば「鼓膜を突き破るような爆音」を映画館のスピーカーから流すことは絶対にできません。
しかし小説で「鼓膜を突き破るような爆音」と書けば、
読んだ人がそれぞれに実際に鼓膜を突き破るレベルの爆音を想像します。これが文字の強みです。
映画化された作品が原作の小説を超えないのは、ここに理由があると思います。
これを活用しない手はありません。
そういった手法を巧みに使いこなすのが、我々コピーライターの腕の見せ所です。
もちろん場合によっては、想像の余地をなくして、たった一つの事実を
きちんと伝えるコピーを書かないといけないときもあるので、注意が必要ですけどね。
ちなみにこの「想像力を〜」の話をする時によく使うのが、以下の2つの映像。
1つ目は、僕が大好きなバンド、レディオヘッドの名曲「ジャスト」のPVです。
細かくは説明しませんが、登場人物たちの字幕による会話で物語が進んでいき、
にもかかわらず、最後の最後、いちばん大切なセリフだけは字幕が省略されて、
主人公の口が動くのみ、というのがこのPVのポイント。
いちばん大切なセリフの内容は、想像するしかないわけです。
もうひとつも、もはや説明不要の名作中の名作。
牧瀬里穂のJR東海「クリスマス・エクスプレス」のテレビCMです。
これのポイントは、最後のシーン。
駅まで彼氏を迎えに行った牧瀬里穂と彼氏が出会う直前でCMは終わります。
となると、その後の2人がどうなるのか、我々は想像するしかありません。
さらに割と分かりやすいのが、アップルの公式サイト上のコピーですね。
想像力を喚起するコピーの代表例でしょう。
そして最後の「3:読まれないことを前提に書け。」もとても大切ですね。
我々が書くのは、小説や雑誌などではなく、広告物のコピーです。
それらを見る人たちは、「文字を読もう」と思って見ていません。
基本的には「読まれない」「好まれない」という前提で
原稿を書くという、いわば非常に悲しい仕事ではあります。
ただ、だからこそ目標を達成できたときの喜びはひとしお。
早く新人の彼にも、そういった感覚を味わってもらいたいですね。
はい、今日はここまで。
これをこのコラムで紹介することに、
どれだけ意味があるかは分かりませんが、まあいいでしょう。
ちなみに3回目と4回目は、僕が説明している様子を動画にも抑えているので、
興味がある方はおっしゃってください。こっそりと動画をお渡しします。
ではみなさん、また来月に。
Editor’sNote
五反田に小さなオフィスを構えるブランディング&クリエイティブカンパニー、アイタイスの代表です。