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【月刊ニシ】2021年7月「奥が深いトリミングの世界」

西村優祐

西村 勇祐

UPDATE 2021.07.29

なんだかんだで今年7本目になりました。
実は6月から資材連(=東京レザーフェア)の新しいプロジェクトがスタートしています。
今回は2019年に発行したブランドブックの動画版です!
まだ撮影がはじまったばかりで、これから約半年に渡って浅草周辺をはじめ、関東や関西、長野などに撮影に行くことになります。

前回のブックでは撮影と企業の記事執筆を担当していましたが、今回はディレクションのみ。
撮影と編集は我が師匠である合同会社ワンダースリーの木村さんと古林さんです。

夏を過ぎた頃から、少しずつ形になると思いますので、お楽しみに!

さて近況報告が長くなりましたが、今日は『トリミング』をテーマに書いていきます。
カメラマンやデザイナーでなくても、当たり前のようにしている切り抜き作業。
実は撮影と同じように奥が深いものなんです!

安易にトリミングしていませんか?

はじめにトリミングが必要とされるタイミングを考えてみましょう。
おそらく多くの人にとって、“指定されたサイズに合わせるとき”がほとんどだと思います。

しかしすぐに「トリミングしよう!」と判断するのは危険です!
まずは「元の画像の比率」と「指定された画像の比率」を確認してください。

たとえば、指定されたサイズが【3000×2000】だとしましょう。
そして元画像のサイズは【5472×3648】です。
つまりサイズは違えど、比率は同じ【3:2】ということ。
このときは元の画像に不満がなければ、無理にトリミングをする必要はありません。
単純にリサイズをすれば解決します。

画像の比率が違う場合にはじめて「トリミングが必要」だと思ってください。

でも正直、トリミングの正解って分かりづらいと思いませんか?
「なんかバランスが悪いな〜」ってモヤモヤは、基本的なルールさえ覚えてしまえば解決します!

トリミングしても写真は写真。基本の構図を覚えておく!

多くの写真は、何かしらの構図のルールに則っている場合が多いです。
それをトリミングの際にも当てはめることで、整ったバランスに仕上がるだけでなく、作業時間もぐっと短縮できますよ!

ではまず、基本的な2つの構図から。

■三分割構図

縦と横を均等に三分割する線を引き、その交点のいずれかに主題となる被写体を配置する構図です。
もっとも一般的な構図で、割と無意識のうちに実践していることも多いと思います。

基本中の基本なだけに、安定感も抜群です

参考までに三分割構図でトリミングしてみましょう!

【3:2】の画像を【1:1】にトリミングします。
主題となる被写体を赤い丸に当てはめて……
完成!

■四分割構図

縦と横を均等に四分割する線を引き、その外側の4つの交点のいずれかに主題となる被写体を配置する構図です。
三分割構図ではちょっと被写体が大きく、圧迫感があるときによく使います。

スマホサイトなどではあまり見かけなくなりましたが、僕が一番好きな構図でもあります。基本スマホは被写体に寄りすぎていて、全部同じ!

では参考のトリミングを!

こんな縦長の画像も……
水面に映る反射が残るように意識して……
完成! 被写体が左を向いているので、左側の海を十分残すのがポイント。

この三分割と四分割のルールはだいたいの写真に当てはめることが可能です。
迷った場合は、どちらかを試してみてくださいね。

ここからは少し応用編になります。
元の写真の構図を活かしたままトリミングしたいときには、絶対に覚えておいてほしい3つです。

■対角線構図

対角線に沿って被写体を配置する構図です。
奥行きを感じさせたり、立体感を出したり。
被写体のメインとサブがセットになっている場合もあるので注意してトリミングしてください。

平面である写真に奥行きを感じさせる構図。なかなかハードルが高いです。

早速参考のトリミングを見ていきましょう!

若干、手前のカップルの位置が気になりますね。雲があって分かりづらいですが、奥に見えるのは富士山です。
主題をカップルに、副題を富士山にして……
完成! 手前の岩場がなくなり、一気にバランスが整った感じがしますよね。

個人的に対角線構図と相性がいいと思うのは【16:9】のような横長な写真です。

異なる比率でも方法は同じ。対角線に線を引いて……
横長になったので、海の広大さもしっかりと見せることができています。

■放射線構図

画角内にいくつかの放射線が収束する点をつくる構図です。
広がりや奥行きを感じさせると同時に、収束点に視線を誘導することもできます。
トリミングするときは「広く見せたい」のか「被写体に注視させたい」のか、きちんと判断しましょう。

これは一例です。どこに収束点が生まれるかは撮影環境次第!

あまりいい参考がなかったのですが、強引にトリミングしてみたいと思います!

洞窟内を歩くカップル。ちょうどカーブに差しかかったところです。
壁のパネルやライトの線、歩道の曲線などの先に被写体であるカップルを配置しています。

もう1枚。これはかなり力技ですが、まぁ放射線構図と言えるでしょう。

ゆるい上り階段を歩く女性を主題に。
階段や木の流れなどの先に収束点があるのですが……
収束点に人の頭部を配置することで、主題が際立ちます。

さらに上記の構図のようにグリットに頼らないものもあります。
トリミングには不向きな構図ですが……。

■額縁構図/トンネル構図

画角の中に、さらに枠となる要素を組み込んで、その枠内に被写体を配置する構図です。
これもなかなかのトリミング殺し構図だと思います。
大切なのはトリミング後も、枠となる要素が枠として機能しているかなので、その点を注意しましょう。

これも一例です。撮影中にどんな額縁がつくれるか、いろいろ試してみるのも面白かも。

では参考を。

洞窟内から海が見える場所です。外から差し込む光が、うっすらと地面や柱を照らしています。
構図を当てはめるとこんな感じ。こういった場合はトリミングはしないほうが吉です!

ときに忠実に、ときには大胆にトリミングを。

いくつかの構図を紹介しましたが、もちろんこれがすべてではありません。
元の画像に何もルールがはまらない場合も当然あります。
そんなときは、大胆に、自分が「良い!」と思うルールを当てはめてみましょう!

現在主流となっている一眼レフカメラの比率は【3:2】の場合がほとんど。
でもどんな比率であれ、四角形であることに変わりはありません。

頭の中で構図のグリットを引いてみるだけで、気持ちのいいトリミングができるはずです!
ではまた次回、お会いしましょう。

西村優祐

西村 勇祐

7月といえば僕たち夫婦の結婚記念日がありました。今年もバラを買って帰ったのですが、やっぱり高かったです。特に意味はありませんが17本、金額にして12,000円でした。