毎朝7時15分。ふたりの子どもを自転車の前と後ろに乗せて、保育園に送る時間です。おそらく100人以上いる園児の中で、いちばん早く園に着く僕たち。そもそも受け入れてくれるのが7時15分からなので当たり前の話です。そこから自転車を飛ばし、7時45分に会社に着き、仕事をスタートさせ、1秒もこぼれることなく確実に19時には会社を出て、19:30に帰宅。そこから10分ほどで夕食をとり、洗い物をして、すぐにふたりの子どもたちとお風呂に入り、絵本の読み聞かせなどをして、21時に彼らを寝室に入れる。そこからまた少し仕事をしたり、片付けをしたりして、自分も早めに就寝。目覚ましで家族を起こさぬよう、寝室ではなくリビングのソファで横になります。そして4時頃には起きて、仕事を再開し、6時半に子どもたちを起こし、また7時15分には保育園へと出発。ここ数年、まるでイチローが打席に立つまでにこなすルーティンのように、紋切り型の生活を送ってきました。土日祝も基本的に同じ。1年のすべての休日を家族と過ごし、22時には寝て、4時に起きて仕事をする。カッコよく言えばストイックですが、逆に言うと遊びや余白がなくて味気ない生活。それを徹底して続けてきました。
また若い頃から、わりと多趣味な人生を送ってきましたが、最近は音楽や映画、本といったカルチャーに触れることはなくなり、またゲームやテレビなどに興じることも皆無で、スマホすらほぼ見ないようにしています。さらに友人や仕事関係の知人、スタッフたちと飲みに行ったり、どこかに遊びにいったりすることもなく(家族で、もしくは家族同士で行くことは多々ありますが)、365日、ずっと仕事と家族のことしかしていない状態。
「そんな人生、楽しいの?」と思う人もいるかもしれません。でももしそう聞かれたら「確かにもっと楽しい形もあるかもしれないけど、これも意外と悪くない」と答えます。なぜなら仕事を通して、他者に、また家族に、その他自分に関係するさまざまな人たちに貢献できることが、ただただ光栄で、嬉しいから。
僕は別に「仕事が生きがい」みたいなタイプの人間ではありません。ただ仕事に向き合う源が「喜び」にあるから、どこまでだって頑張れます。最悪365日、すべて仕事をしなくてはいけなくなっても、そんなに嫌な気はしません。仕事をすることで、弊社サイトのTOPページにも、このページにも大きく掲げられた『GREAT PLEASURE』、つまり『大きな喜び』が得られるので、やればやるほど充実感も満足度も高まります。その結果、こんな生活スタイルが生み出されました。
すこし極端な例ですが、想像してしみましょう。昨年の話だと思ってください。悲願のワールドカップ優勝を目指すメッシが、一人のスポーツトレーナーを呼んでこんな風に言います。「今回こそは、なんとしても優勝したい。最高のパフォーマンスを出したいから、僕の専属になってくれ」。他にも数多いる候補の中で、史上最高のサッカー選手に、重要な仕事の担当者として自分を選んでもらったトレーナーはどのように思うでしょう。その光栄さに身震いし、我を失い、他のことをすべて捨ててまでその仕事に取り組むでしょう。
僕もクライアントから案件の相談をいただく度に、上に出てきたトレーナーと同じような思いを感じてきました。すべての経営者には大きな志があります。それぞれの事業にかける思いがあります。「商品を売りたい」「組織として成長したい」「優秀な人材を採用したい」……。そんな崇高で切なる願いは、メッシが目指した「ワールドカップ優勝」と、規模や動く人・お金などに違いはあれど、本質的な部分では何ひとつ変わりません。
そして僕のようなちっぽけで、特に飛び抜けた取り柄もないようないち個人、いちチームが、自分が培ってきたスキルを活かすことで、クライアントの皆様が個々に抱く、時にささやかで、時に壮大なる願いのお手伝いができる。その光栄さは言葉にできるレベルのものではありません。それに応えるべく、この5年間、捨てられるものはすべて投げ捨てて、クライアントのために捧げてきました。
もちろん問題も浮き彫りになります。それは前述の「貢献できる喜び」という部分にばかりフォーカスするあまり「動きに見合った対価をもらう」という部分をおざなりにしてしまったということです。どうしても「貢献できる喜び」だけで満足してしまって、「まぁ、お金はいいか」と思ってしまう癖があります。その結果、恥ずかしながらこの5年間、赤字ばかり。お仕事を依頼している税理士の先生も見るかもしれないページなので、見栄を張って嘘をつくことはできません。仕事はいつだって極めて忙しいし、高品質なアウトプットでクライアントに成果を提供できている自負はあるのにも拘わらず、数字は伴いませんでした。
これは決して“清貧”的な概念に酔いながら良心的な人ぶっているわけではなく、また自己犠牲的な感傷に浸っているわけでもなく、ただただ経営者として僕の落ち度に他なりません。百歩ゆずって、クライアントには喜んでもらったかもしれませんが、もっとも大切な家族には迷惑をかけてばかり。なぜならパパは仕事ばかりしているのに、一向に余裕のある生活ができないわけですから。それにそもそも会社が潰れてしまっては本末転倒。果たすべきクライアントへの貢献すら叶いません。6年目となるここからは、数字も強く意識しながら進んでいきたい。会社をつくって5年が経った今、遅ればせながらそんな風に考えています。とはいえ、もちろん貢献も忘れません。そのバランスがとれる経営者を目指します。
長くなりましたが、もう少しだけ。いま僕がともにお仕事をしているクリエイターたち。つまり今回「corporater」として紹介しているチームは、はっきり言って最強の面々です。まずはCIやVIといったブランディング領域、そしてグラフィック系のお仕事で腕を振るってくれる最強クリエイティブディレクター兼デザイナーの塚本さん。つづいてフロントもバックもお手の物、最強エンジニアの乾くん。お仕事をともにするようになって約1年、すでに阿吽の呼吸で撮影を進めてくれる最強カメラマンの名児耶さん。
そんなスーパークリエイターたちをまとめ、牽引していくのが僕では、母艦が貧弱すぎてバランスが悪いだろうと思うくらい、優秀なハイパフォーマーたちがアイタイスの仕事に携わってくれています。これまで関わりの合ったクライアントの方々、これからの出会いが待ち遠しいクライアントの方々。高い品質を期待してください。このチームで臨む限り、必ずそれに応えられる自信があります。そしてそこにアシスタントの田村を含めたチームの皆さん。月並みですが、アイタイスがあるのは皆さんのおかげです。これからもともに高みを目指しましょう。
そして最後に、何よりも大切な家族へ。いつもと同じように仕事をして、いつもと同じように家に帰ると、法人化を祝う豪勢な食事と花束が用意されていたあの日から5年が経ちました。日々は恐ろしい早さで過ぎていくもの。サイトの撮影に協力してくれた時にはあんなに小さかった長女は、年長さんとなり、来年は小学生。今では彼女のとなりに、お尻をプリプリさせながら元気に歩く弟くんもいます。「マジメで賢そう、仕事ができるお父さん」なんて、もともと目指すことすらできません。「バカなことばかり言って、家族を笑わせるひょうきんパパ」が理想の姿。そうあれているかを何度も確認し、いっときも怠ることなく、妻とふたりの子どもと向き合い続けるつもりです。また今日も一緒にお風呂に入ろう。週末はご飯を食べにいこう。その夜はナイトスクープやちびまる子ちゃんを観ながら一緒にお酒を飲もう。君たちがいるからパパは頑張れる。これまでも、これからも変わらない事実です。その存在に、感謝。そばにいてくれることに、感謝。いつも本当にありがとう。
では皆さん、また5年後に……と言わず、3年後……とも言わず、もっと近い未来に合える時を楽しみに。そのために、今日を全力で。