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UPDATE 2019.11.28@Nakameguro

Vol.01

社長に訊けば、社長に効く。

Vol.01 株式会社ノティオ
代表取締役 山田真澄氏

アイタイスの社長、雨森が、親交のある先輩社長にお話を聞くことで、アイタイスにも取り入れられるところは、どんどん取り入れていこう! というこの連載。1回目のゲストはこの人しかいません。雨森にとって、もっとも身近な存在であり、またもっとも尊敬できる先輩社長でもあり、さらに師匠でもある株式会社ノティオの山田さんです。

収録日 : 2019.10.18

対談メンバー

雨森武志
株式会社アイタイス 代表取締役

山田さんは、相手がどれだけ若手だろうと、
どれだけ下っ端だろうと、
めちゃめちゃ真剣に話を聞いてくれる人。
僕の師匠と呼べる存在です!

山田真澄
株式会社ノティオ 代表取締役

あめやんは真面目で面白い人。
どんな課題でも前に進めることができる
特殊能力の持ち主!

はじめに

『株式会社ノティオ』の創業は2008年。東京と大阪に拠点を持ち、主に住宅・不動産企業に対し、「ブランド」を軸としたサービス展開で企業・事業の成長をサポートしている。

現在は『ブランドコミュニケーション事業』『クリーンビー事業』『リノスタ事業』の3つの事業を展開している。

『リノスタ事業』立ち上げの際に、編集スタッフを探していた山田さんと雨森が、山田さんの奥さんを介して知り合う。そこから二人三脚でメディアを運営してきた。

その後、山田さんと雨森は1つのチームとなり、多くの企業のブランド構築や、理念策定などを行ってきた。山田さんは、雨森にとってブランドマーケティングの師匠的な存在。

アイタイスの雨森と西村は、現在の事務所ができるまで、2年間にわたって、ノティオの東京オフィス内に間借りをしていた。

したがって、アイタイスの組織づくりにおいても、様々な観点から、ノティオを参考にさせてもらっている。

雨森は、友人がそうであるのと同じように、山田さんからも「あめやん」と呼ばれている。

テーマ1『ノティオという会社』

2019年で創業12年目になるんですよね。山田さんが新卒から10年以上働いていた不動産専門のコンサルティング会社をやめてノティオをつくったと聞きました。
そうだね。前職の会社で、僕を雇ってくれた社長が亡くなった後、けっこうゴタゴタがあって、組織としてあまりいい状態じゃなくなっちゃって。僕は1年間くらいは、立て直しをがんばってみたけども、自分のキャリアを考えた時に、「もう、ここにいてもあまり学べないな」と思って、自分でやろうかなと。その会社で僕の直属の上司だった先輩と、その会社に僕が引っ張ってきたクリエイティブディレクターがいたので彼を誘って、3人が中心となってスタートしました。
では、現在と同じように、はじめからコンサルティングを含めた営業機能と、クリエイティブ機能の両方を持っていたんですね。
うん。僕自身が、「戦略立案」と「クリエイティブ」の掛け算をできる組織をつくりたいと思っていたから。
その2つは、扱いとしてずっと並列ですか? 営業の会社に制作部門があるわけでもなく、制作会社に営業がいるわけでもなく。
並列というか、シーソーみたいなことなんだよね。営業が強くなるとクリエイティブが弱くなるし、クリエイティブが強くなると営業が弱くなる。前の会社は、営業が強かったんだよね。制作側が何か言ってきても「いや、営業の言う通りにやれ!」みたいな(笑)。だからノティオの最初の頃は、どちらかというとクリエイティブの方に軸足を置いていたかな。というのもニュートラルにやっていると、自然と営業の方が強くなっちゃうから。なぜなら社長である僕がそちら側だからね。そういう理由もあって、クリエイティブの言うことを優先させていたと思う。でもそうするとやっぱり営業が弱くなっていくし、今度、営業に力をつけさせると、クリエイティブがブーブー言い出す(笑)。そういうもんなんだね、組織って。でも最近、それを解決するいい方法を思いついたので実践してみて、うまくいったらまた共有するね。

ノティオが運営する『ワークショップスタジオ中目黒』にて。とってもオシャレな空間!
営業というか、ノティオがやっているのは、概念的には「コンサルティング」に近いものですよね?
うん。でも創業時にやっていたのは、「コンサルティング型営業」と呼ばれるようなものだったかな。基本的には、チラシとかウェブサイトとかを売って商売をしていたんだけど、それだけだと競争力がないし、クライアントにも喜んでもらえないから、自然とコンサルの領域まで踏み込んでいたわけ。
クリエイティブの部分で発注してもらうために必要なこととして、コンサルティング部分もやっていた。
そう。たとえば新規で販売する分譲地があるけれど、目標を達成できそうにない。そんなクライアントがいたとするよね? それに対して、まず「いつまでに何棟を売らないといけないか」を確認する。そして、集客数とコンバージョンを照らし合わせて、必要な販売戦略を立てて、さらに広告予算の中で、各媒体への出稿計画と見積もりまでつくる。このあたりはコンサル領域だよね。そこにプラスする感じで、クリエイティブの計画もつくっていた。「ここのタイミングで、こういうコンセプトのもと、こういう広告をつくりましょう」みたいな。それってつまり、チラシとかウェブサイトといった我々の商品を売るための「コンサルティング型営業」なんだよね。ノティオをつくって2〜3年は、それをやっていたかな。ただ、それだとコンサルの部分はお金がもらえないんだ。
そうですよね。クリエイティブのところまできてやっとお金が発生するというか。そこにいたるまでの調査分析とか提案とかは、いわばボランティア。
そうそう。いわゆる広告会社的なやり方だと、そうなっちゃうよね。さっき言ったように、目的と課題を明確化して、数値に置き換え、そこに対する戦略を立てるっていう工程をやるでしょ? するとそれに対して、お客さんもすごく喜んでくれて「ありがとうございます!」とか言われるんだよね。でも、じゃあ発注してくれるかって言うと「ちょっと検討します」みたいな。実際、そのまま失注することも何度かあって。
時間と労力をかけて、お客さんにも喜んでもらったけれど、対価はゼロだったんですね。
うん。だからそれは広告会社的なやり方だったんだよね。それがよくないので、コンサル領域とか、ブランド構築の部分でもプログラムをつくって、値段をつけて、商品化したんだ。そのタイミングが、いわゆる広告会社からコンサルティング会社に移行する転機だったかな。

山田さんは、秋カラーのジャケットで登場。

それに対し、雨森は約20年ぶりに買ったというパーカーで迎え撃ちます。
現在、『ブランドコミュニケーション事業』においては、「コンサルティング・ブランディング」、そして「クリエイティブ」、さらに「運用・セールスプロモーション」の3つの領域でやっていますよね。その3つは、並列的に考えていますか?
今はね、その3つ目の部分を強くしないといけないって社内では発信している。その分野で成果を上げるために、みんなでデジタルコミュニケーションを中心とした領域の提案をしている段階かな。
つまりブランド構築やクリエイティブではなくて、運用フェーズの部分ですね。
うん。そこを強くしないと、我々の会社に道はないっていう風に思ってる。最終的に、ビジネスの入り口としては2つになるんじゃないかな。まず1つ目は、中長期的に会社を強くしていくブランディングサービス。これは、企業が持っている軸を定めて、長い目線で見て、社内メンバーにも社外の人たちにも喜んでもらうために、組織の背骨の部分からつくっていく感じ。
ブランド構築から入って、そこで明らかになったものをクリエイティブとしてカタチにし、さらに運用までやっていくものですね。
そうだね。で、もう一つは、短期的に集客効果を高めるマーケティングサービス。これは運用の部分から始まる感じですね。収益でいうと、こっちで80%くらいまで持っていきたい。残りの20%をさっきのブランディングサービスで埋める。そういう形になれば、継続収益の中で必要な売上が満たされる感じになるから。
ノティオが掲げるブランド・マーケティングの独自アプローチ(画像は公式サイトから)
なるほど。でも思ったよりマーケティングサービスが占める割合が大きいような……。
そうだね。でもノティオって、元々は集客をつくっていくのがメインの会社だったから。だけど、この数年間、よくも悪くも「ブランディング」っていうことを強く言い過ぎたこともあって、コンサルティングワークとブランディングワーク、さらにクリエイティブワークで仕事が終わっちゃうケースがけっこうあったんだ。うちのクリエイティブメンバーも、運用フェーズのことをあまり考えずに、「とにかくすごくいいものをつくる!」みたいな風に頭が行っちゃって、その部分だけが突出しちゃうというか。でもそれをやっていると、クライアントに喜んでもらえないし、ノティオの経営も不安定になっていくからね。
確かに企業サイトのリニューアルや、企業としてリブランディングに取り組むタイミングって、それほどたくさんあるわけではないですもんね。
そうそう。それってたとえば社長が2代目、3代目に変わる時とか、今やっている事業と発信していることがずれてきた時とか、そういうタイミングにきちんと考えることでしょ? そうなると圧倒的に機会が少なくて、経営的には安定しないから。でも、集客という観点から見れば、いつでも必要なわけで。どこの会社も常に抱えている課題だよね。だから、細々とでもいいので運用活動を毎月やらせてもらって、しっかりと集客面で効果を実感してもらってから、2年後に大改革を受注する、みたいなイメージですね。
あ、なるほど。その部分を強化することで、80%の部分を埋めて経営的な安定を目論むと同時に、20%の部分の種まきにもなっているってことですね。
そうだね。そういう風に事業構造を変えようとしている途中ですね。

テーマ2『会社における社長としての役割とは?』

ノティオには、山田さんを含めた役員が3名と、スタッフが30名ほどいますよね? 会社の中で、社長である山田さんだけが知っている情報ってあるんですか?
う〜ん、どうかな……。おそらく僕だけが知っている情報はないんじゃないかな。少なくとも役員はすべてを知っている状態で、僕もなんでも相談できると思う。そこは自分だけが負う部分を軽くしたいから(笑)。それに役員の1人は、前職の上司でもあるから、やっぱり頼りになるよね。客観的な意見をもらえるし。あめやんはどうなの?
それぞれのスタッフの給料の額に関しては、僕しか知らない状態ですね。毎月の業績や目標達成率などは、ノティオにならって、すべてスタッフに報告しています。では、「会社としてどこに向かっていくのか」みたいなことは、どうやって共有しているんですか?
半期ごとに経営計画書をつくって、年に2回、東京と大阪のすべてのスタッフが集まった場で発表してる。そのタイミングで、前の半年の業績も振り返って、課題なども共有していますね。半期ごとの経営計画書は、ノティオを創業した時から、ずっと作ってるかな。
はじめから! さすがきちんとしている……。ではやはり、山田さんの役割としては、会社としての方向づけとか、経営の方針を打ち出すという部分が大きいですか?
そうだね。経営の仕組みや商売の仕組みづくりですね。もちろん僕だけはなくて、役員の考え方も確認して、さらに細かい部分は、スタッフ全員を巻き込みながらつくっていくけどね。
確かに、ノティオって、チームの力を最大化するための仕組みづくりとか、ルールづくりには意識的だなっていう印象はあります。
うん。いっぱい仕組み化したい。
それぞれの仕事を属人化せず、誰でもできるようにルール化するための取り組みですよね。とはいえ、なかなかそうはならないですか?
ならないことの方が多いかな。ルールとして決めても、動いていくかどうかは別の問題だし。うまく運用されない時は、何か理由がある。それは例えば、ツールが使いにくいとか、手間がかかってめんどくさいとか、組織体系が悪いとか。だから、これまでチーム編成も何度か見直しをかけてきたし。たとえばクリエイティブチームには、『プロデューサー』と『ディレクター』、そして『デザイナー』がいるんだけど、どうしても伝言ゲームになるし、スピードがかかったり、効率的に進まなかったりすることがあるよね。それにデザイナーがクライアントとの距離を感じてしまうこともあるし。
クライアントと直接やりとりをしているプロデューサーが、プロジェクトの内容をディレクターに伝え、さらにディレクターがデザイナーに落とすという感じですか?
そう。プロデューサーはディレクターにプロジェクトの全体概要を伝えていたとしても、デザイナーからは「そんなスケジュールではできない!」って声が上がったり、でもプロデューサーからは「いや、だいぶ前にディレクターには伝えているよ」ってなったり、まあいろいろ出てくるわけ。こうなってくると、個々の案件とか、個人のパフォーマンスではなくて、組織体系の問題だなって。

ブランドコミュニケーション事業の成果物(画像は公式サイトから)
なにか問題が起こった時に、「誰が悪い」とか「お前、もっと頑張れよ」と個人の問題にするのではなく、仕組みで解決するということですね。
そのために、『問題解決会議』っていうのを定期的にやってる。いま起きてる課題を出してもらって、それに対して、みんなで解決策を挙げていき、それをルール化していく感じですね。「頑張ろう!」だけだと何にもならないから。でもそれでも動かないこともあるけどね。
ルール化しても、運用されないってことですか?
そうそう。動くまでに時間がかかることもあるし。でもいちおうルール化はしている。たとえば、あめやんも分かると思うけど、お客さんの都合で納品までのスケジュールがリスケになることって多いよね。ただ、それが起こるとリソースの組み換えをしないといけないし、スケジュールを組み直すのにもすごく時間がかかるから、できれば避けたい。じゃあ、リスケが起こらないように事前に何をすべきか、みたいなことをみんなで意見を出し合う。で、現実的に運用できそうな方法をルールにしている感じ。
なるほど。現場の声をもとに、ルールをつくっていくんですね。
他の例だと、クライアントへの訪問時間を短縮するために、プロデューサーは実際にお客さんのもとに行くけれど、ディレクターはZOOMみたいなテレビシステムを使うことで訪問をせずに参加する、とかね。移動だけで2時間もかかるお客さんとかもいるから、往復で4時間もとられるとか、よくないから。そんなのはすぐにでもできることだし、そのままルール化していく。そういう風に一つひとつ解決案を募って、整理していく感じですね。
問題をベースにみんなで話し合って、解決策をルール化していく、ということですね。そういう観点から、全体の動きを見るのが山田さんの役割なんですね。
そうだね。やっぱり現場にいるスタッフたちの顔色を見ていると分かるから。「なんか、疲弊してるな」みたいな。あと「なんで今になって、そんな修正が来るの?」みたいな声が上がったりするよね? そういう時に、「あ、組織として、うまく行ってないな」って感じるから、「そこは一回、みんなで話そうよ」って声をかけてる。

時にその視線は、鋭い。

いや、こっちの方が鋭かった……。

『問題解決会議』で寄せられた、解決案を見せてもらっていました。
決められたルールに対する反発などもありますか?
あるある。そんなの、めっちゃあるよ(笑)。当然、会社が進んでいく方向に100%納得できないっていうスタッフもいると思うし。それに関しては、半分はチューニングしていって、半分はほっとく感じかな。ほっとくというか……、やっぱり僕とスタッフとでは、考える時間軸が違うっていうのかな。
時間軸?
そうだね。やっぱり僕は代表なので、東京のことも大阪のことも見ていて、全員をきちんと評価をして、それに見合った給料も払わないといけないし、全体の公平性にも気をかけないといけない。例えば、一人のスタッフに「ここはこうじゃないですか?」って言われた時に、「東京でそれをOKしてしまうと、大阪のメンバーからは反発が出るな……」とか考えるよね。ひとつ前例を作っちゃうと、他のメンバーが嫌な思いをすることもあるから。だから「それは規定がないからできないよ」と伝える。でも本人からしたら、「そんなこと、別にいいじゃないですか」って思うだろうしね。
すると、少しわだかまりは残りますよね。
たとえば、本当に細かい例だけど、ノティオには自転車通勤をするスタッフがいて、それは全然いいんだけど、大阪オフィスは自転車を事務所のある階数までエレベーターで上げて、オフィス内に停めてたの。でも、台数が増えてきたので、駐輪場を借りるように指示を出した。その後、東京でも同じことが起きて、「オフィスには停めてはいけない」っていうルールをつくったけど、大阪と比べて、東京は駐輪場が遠いし、駐輪代も高いから、東京のメンバーはグズグズ言うよね。でも、僕の立場として、大阪でそうしてるから、ダメだって言い切らないといけない。正直に言って、経営レベルから言うと、自転車をどこに停めようがそんなことはどうでもいいんだよね(笑)。ただ「ここでOKを出したら、ここもOKにしないといけない」みたいなことが、大小のレベルで無数にあるから。その都度、判断するのがめんどくさすぎて、ルールというか、判断基準を決めていかないといけないよね。
なるほど。個別に対応していたらきりがないから、「これに照らし合わせて、考えて」っていう汎用できる基本のルールをつくっているわけですね。
まあ本当は僕たちみたいな30人くらいの規模だったら、そんなのいらないはずなんだけどね。でも、都度考えていたら、ほんと、めんどくさいから(苦笑) 

テーマ3『スタッフとの距離感。そして、これからのノティオ。』

「社長は孤独だ」みたいな話がよくありますが、その辺りは、山田さんはどうですか?
昔はあまり感じてなかったけど、今は少しあるかな。っていうのも、最近は意識的に現場に介入しないようにしているから。昔は若手のメンバーを連れてご飯を食べにいったりして、すごく楽しかったわけ。やっぱり、誰だって孤独の方が辛いから、距離を縮めたくなっちゃう。でも、そういう場って、直属の上司に対する愚痴みたいなものが、必ず漏れ聞こえてくるでしょ? その若い子からすれば、その愚痴を社長に聞いてもらえたってことで喜ぶんだけど、その愚痴を聞いた時に僕が「確かに、それは問題だね」って同意してしまうと、「社長が承認してくれた」という事実が出来てしまう。それがよくないんだよね。その後、無意識のうちに、直属の上司の言うことを聞かなくなるっていう問題が出てきちゃう。その結果、組織が円滑に動かなくなるよね。
あ、なるほど。「社長も同意していたし、やっぱり上司が言っていたことは間違っているんだ」って思っちゃう。
まあそうだね。昔は「社長に聞いてもらえて、すっきりしました」みたいなことを言われて、僕も気持ちよくなっていたけど、そんなのけっきょく僕の自己満だよね。そういう意味では、たしかに昔の方が孤独ではなかった。だけどそれは、スタッフに囲まれて、彼らの本音とかを聞いてあげて、僕がいい気分になっていただけ。だから今は、話はしっかり向き合って聞くけど、発言には注意している。若手から上司に対する不満が出てきても、僕はそれをすぐに承認せずに、「そういう意味で言ったんじゃないんじゃない?」「一度、直接確認してみたら?」って返すようにしている。逆に僕が「確かにそれは問題だな。俺からきつく言っておくわ!」って言っちゃうと、問題が大きくなるからね。
社長に承認してもらったことで、直属の上司に対する信頼が失われていく可能性があるってことですね。
そうだね。本人のキャリアとか仕事の成果は、どんどん承認すればいいと思うけど、上司への不満とか、愚痴は承認しない。
組織のトップが、間を抜かして承認するのは危険!
あと、今は“斜めの関係”も基本的に禁止しているよ。僕が思いついたことではなく、勉強して分かったことなんだけど。それはつまり、Aというリーダーの下についているスタッフがいるとして、Aに対する愚痴みたいなものを、Bというリーダーに言うとする。その時にBが「確かにそれはAさんがおかしいよね」って言っちゃうと、そのスタッフは「あ、やっぱりAさんはおかしいんだ」って思っちゃうよね。だから斜めの指導も直接的にはしないように決めてる。
それは全体に伝えているんですか?
いや、リーダーに言ってる。もし若手からそういう話が出てきたら、そこでその意見を肯定せず、「だったら、一度、直接相談してみたら?」って伝えるか、リーダー間の議題として挙げてくれっていう風にしている。でもね、飲みに行ったりすると、言われた別のリーダーも「それはひどいね」って言っちゃうんだよね。やっぱり自分が気持ちよくなりたいから。だから気をつけないといけないね。
なるほどね。垣根を飛び越えた関係が、組織のマネジメント的に問題を引き起こす可能性があるんですね。
でもだからって、あまり距離を置きすぎるとコミュニケーションが減っちゃうから、発言に注意するという自分にルールを決めて食事に行ったりもするけどね。

問題が大きくならぬよう、ちょっとしたことでも、ルール化します。
今は、仕事をしていてどんな時が嬉しく感じますか?
やっぱり、経営品質が上がった時かな。具体的に言うと、新しい商品ラインナップが出来た時とか、「組織をこう変えたらうまく進むんじゃないかな?」みたいな発見をした瞬間とか。
今って、組織づくり以外で、山田さんが担当している領域はないんですか?
いやいや、まだ一部、僕が担当しているお客さんもいるからね。本当は現場は任せて、経営の方だけを見たいんだけど、そうもいかなくて。あと、自社のマーケティングに関してもやってる。それはまだすべてをスタッフには渡せないから。

『ワークショップスタジオ中目黒』の屋上にて。2人がゆっくり話をしたのは久しぶりとのこと。

『ザ・社長』と言えるオーラが出てる!
ではノティオとして、今後の展開として考えていることはありますか?
創業してから、ずっと『住宅・不動産』のジャンルでやってきて、去年、その枠を取っ払ったんだ。だけど結局、住宅系のクライアントばかりになったんだよね。そこは一つの失敗だったと思ってる。『住宅・不動産』と『ブランドマーケティング』っていう『専門✕専門』だからできることを打ち出して、尖った領域にいかないといけない。だから、今あらためて、もう一度『住宅・不動産』に集中しようと思ってますね。
山田さんが登壇するセミナーでも、「専門の分野を持って、そこで戦え」ということが、テーマとして掲げられていましたもんね。
そうそう。その上で、さっき言ったように、運用の部分に力を入れることで、『ブランドコミュニケーション事業』の経営基盤をしっかりと安定させることだね。あと『クリンビー事業』でも、同じようなビジネスモデルになっているんです。簡単にいうと、お部屋を預かって、清掃をするんだけど、ランダムに発注がくるわけではなくて、物件単位で預かるので、賃貸の管理会社と同じようなモデルなんですね。たとえば1つの物件で10部屋を預かって、1部屋あたり月に5回くらい回転するとなると、50回くらい清掃の機会が生まれる。それに粗利をかけた額が収益になります。だから物件をどれだけ預かれるかですね。
なるほど。じゃあお客さんはビルのオーナーや管理会社ってことですか?
うん。あとは投資会社とか、民泊オーナーですね。預かった物件が増えれば、収益もすごく安定するので。あとは、あめやんと一緒にスタートさせた『リノスタ事業』だよね。リノスタも同じで、『リノベーションをする』というカテゴリを充実させて、リノベーションを提供する会社からの課金モデルを構築したい。
そうですね。
あとはね、ホテルとかシニア向けの住まいとか、そういうカテゴリで新しく事業をやれないかっていうことも考えているんだよね。たとえばホテルの集客のお手伝いをしたり、ブランディングをしたり。つまり、今ノティオが専門としている『住』の少し周りにある領域かな。つまり『泊』とか『暮らし』とか。『クリンビー』も『リノスタ』もそうだよね。今の日本においては、最初から事業を大きく成長させていくための領域を探すっていうのは、難しいかなと思っていて。そうではなくて、スモールビジネスをいくつか立ち上げて、そのクオリティを高めていって、結果的にそれが大きな収益をあげられるまでに成長させられたらいいかなと。
事業として目標となる数値ってありますか?
僕の感覚では、一つの事業を3億〜5億くらいの規模に持っていって、それをたくさん抱える、みたいなのがいいのかもしれない。やっぱりこれから人口がどんどんと減っていって、マーケットが小さくなっていく中で、ひとつの事業をめちゃめちゃ大きくするって、難易度が高いと思うんだよね。ノティオの経営理念に「日本に誇れる企業体をつくる。」という風に掲げられているように、企業ではなくて、“企業体”として考えていく感じかな。最初は事業部としてのスタートになるんだろうけど、それを子会社化していくこともあるかもしれない。そうやって、成長していきたいなと思っています。

(おわり)

SPEAKER’s Note

雨森武志
株式会社アイタイス 代表取締役

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ノティオのオフィスに間借りをしていた2年間(自分の仕事に集中しているふりをしながら、山田さんの言動や組織運営のための施策の数々を、こっそりと、いやじっくりと盗み見ておりました・笑)、そして、山田さんにお声がけいただいて、いくつかのプロジェクトを一緒に進めた中で得たものはとても大きく、それがなかったら、今の僕、そしてアイタイスはありません。山田さんとの対談は、連載にしたい!

山田真澄
株式会社ノティオ 代表取締役

あめやんは聞き上手、まとめ上手だからこれからも定期的に話を聞いてくれるとうれしいですね。自分の考えていることをアウトプットすると思考が整理されていいですね。

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