目次

UPDATE 2020.03.04@Awaza

Vol.03

社長に訊けば、社長に効く。

Vol.03 株式会社BHF 代表取締役
廣瀬大輔氏

アイタイスの社長、雨森が、親交のある先輩社長にお話を聞くことで、アイタイスにも取り入れられるところは、どんどん取り入れていこう! というこの連載。3回目の今回は、関西を主戦場として、2次会、1.5次会のプロデュースを手掛ける「FOR U」を運営する株式会社BHFの廣瀬氏をお迎えしました。「結婚式が大好き」と語りつつ、ブライダル関連以外の事業に力を入れたいと語る廣瀬くんの頭の中は、今どうなっているの?

収録日 : 2019.12.06

対談メンバー

雨森武志
株式会社アイタイス 代表取締役

地元である大阪には、社長をやっている
旧友がわりと多いのですが、
事業の規模や展開力から見ると、
やはりヒロセはトップランナー。
最近はTwitterでの情報発信にも
注力しているようで、
その発言、行動、常にチェックしております!

廣瀬大輔
株式会社BHF 代表取締役

予備校で最初に出会った時の
印象は最悪だったアメヤン(笑)
自分と似た空気を放ってるんかな。
彼の周りにはいつも「人」がいてる。
若干強面だけど、優しくて面白くて
芯がある人。そして、言葉の魔術師。
それがアメヤン!

はじめに

廣瀬くんと雨森は、大阪の予備校で同じクラスとなった時からの知り合い。

2010年には、雨森の上京に際する送別会、そして2015年には雨森の2次会の司会を担当するなど、個人的にもお世話になりっぱなし。

創業から約10年がたち、2018年には「株式会社60」を設立。新しい事業展開を目論んでいる。

そんな2人、お互いを「ヒロセ」「アメヤン」と呼び合っている。

同級生との対談は、いつもの通り、タメ口。そして大阪弁のまま編集をせずにお届けします。

テーマ1『“ナシ婚”が増える中で……。』

また新しい会社を作ったらしいね。株式会社60。これ、なんて読めばいいの?
株式会社「ロクジュウ」やな。今日はこの会社の取り組みに関しても知ってもらいたいと思ってて。
OK。でもまずは主力事業である「FOR U」を運営する株式会社BHFの方から。もう創業して10年くらいよね? 主に、どういったことをしているの?
もともとは2次会の幹事代行から始まって、今は1.5次会のプロデュースも多い。「1.5次会」っていうのは、親族だけで挙式をやったり、新婚旅行がてら海外で式を挙げたりした人が国内で開くパーティーのことね。
2次会よりはちゃんとしてて、でも披露宴よりはカジュアルな感じかな。
そうそう。いまは1.5次会は増えてるけど、2次会は減ってきてる。そもそも、結婚をしない人、あと結婚をしても結婚式をしない人が増えてるからさ。今は「ナシ婚」とか言われてるけど。近い将来、ナシ婚をする人の数が、式を挙げる人を上回る可能性もあるみたい。
えー! そうなんや。時代の流れやな。
だから我々もブライダル関連ではない事業をすすめる必要に迫られてて。
そもそもヒロセがブライダルに関わる仕事をしようと思ったきっかけは?
20代後半くらいから、周りの友達たちが結婚しはじめたやん? アメヤンもそうやと思うけど、俺も仲間内で割とまとめ役みたいな立場やったから、2次会の幹事とか司会とかを頼まれてやることが多くて。で、2次会って、終わってみるとお金が余ることがあるやん? それを「新婚旅行の足しに、どうぞ!」って渡してたんやけど、時には「いやいや、ヒロセが使って!」って、お小遣いをもらったり。
うん、あるある。まあ一つのコミュニティに1人くらいは、そういうポジションの人がいるよね。
そんな中で、俺が司会をしていた、とあるパーティーに来ていたゲストの人から「僕の2次会のときもお願いしたい」って言われて。
ついに知り合いじゃない人から、依頼が来てしまったってことやね。それはさすがに俺もなかったわ。かなり名司会者っぷりを発揮してたんやろな。
でも当然まだそれを仕事にしているわけじゃなかったし、その時は「俺じゃなくていいんじゃない?」「友人の中に適任がいるでしょ?」って思ったよ。さっきも言った通り「知り合いの中に1人くらいはまとめ役みたいな人がおるんちゃう?」って思ってたから。でも、そういうポジションの友達がいない人とか、いたとしても、その人にこそパーティーを楽しんでほしいから、幹事・司会を頼みたくないのかなとか思って。
確かに、幹事とか司会をやっていると、楽しんでいる余裕はあまりないもんね。むしろ、めっちゃ大変っていう。
それに、友達の2次会の司会をするといっても、自分が知っている人なんか、1〜2テーブルくらいやん? 残りはまた別のつながりの人なんやから。
それはそうやね。例えば、高校の友人のパーティーの司会をするとしても、その人の大学時代の友達は知らんし、会社の人たちも知らん。
うん。だからやってみてもいいかなと。その時に調べてみると、当時の大阪には、2次会の幹事代行をやっている会社が3社ほどあって。それを見ながら、「これって商売になるのか」って思ったのがきっかけやね。
なるほど。そもそもヒロセは、お父さんも会社をやってるやん? やっぱり小さなころから、自分で会社をつくろうとか、社長になろうとか、思ってたの?
うん。おそらく思ってた。途中、バンドをやったり、俳優を目指したりもしたけど、30歳になるまでには、なにか自分でやりたいなって気持ちがあった。
実際に自分で仕事をしはじめたのも30くらい?
うん。大学を卒業するときには就職活動をせず、20代の後半ですこしサラリーマンを経験して、そこの会社を辞めたのが29歳かな。
俺が上京したのが29歳の時なんやけど、その送別会の司会もヒロセがやってくれたもんね。あれが起業する直前のタイミングやったってことか。
そうそう。そこから、最初の1年くらいは無休で働いたな。そのうちに、元々の友達とかその紹介だけではなく、サイト経由でも依頼が来るようになって。はじめは個人名義やったけど、1年が経って会社にしてもやっていけるって手応えを掴んだよ。

落ち着いた貫禄のようなものも出てきましたね、ヒロセ社長!

気心の知れた友人への取材で、こちらも完全リラックスモード。
創業当時に、大阪にも3件は競合があったわけやん? その中でFOR Uが持つ独自性みたいなのは、あったの?
それは、プランナーが司会も兼ねるってことやね。ずっと打ち合わせをしてきた人が、司会もやるから、新郎新婦のことがよくわかっているし、パーティーもきちんと組み立てられる。
なるほど。
あと、途中から衣装のレンタルと、撮影をできる環境も作った。それらのサービスのかけ合わせができれば、後発でも勝負できるんじゃないかなって。それが2年目の終わりくらいかな? でも、その時が経営的にはいちばん難しくなった時で。
事業拡大するのに、お金を借りたから?
そうそう。それまでは、提携している衣装屋さんを紹介していたんやけど、成約率があまりよくなくて。その時に、当時、パーティー当日のお手伝いをしてくれていた女の子が「私、衣装屋さんで働いたこと、あります」「私にまかせてください!」って言ってきたから、やってみた。そこまでは借金をせずに経営していたから、お金を借りることには抵抗があったんやけどね。
まず、ショップとなるスペースがいるもんね。もちろんドレスも仕入れないといけないし。
そうやねん。オフィスを広いところに移転して、それまで使っていたオフィスを撮影用のスタジオに変えた。ドレスを借りにきたお客さんに、特典としてスタジオでプロのカメラマンが撮影しますよっていう。だからそのタイミングで、カメラマンも雇ったし。結果的に、1,300万ほど借り入れて、一気に1,100万くらい、使ったんかな。
つまり、ドレス屋さんの店長となる女の子と、カメラマンの2人一気に雇って、さらに拠点もオフィスとスタジオの2つになったと。
うん。スタッフの給料と家賃、その他払わないといけないものがいきなり増えて。あのときが、人生で一番恐怖やったな。通帳を何回みたことか(笑)
分かる。あれ、怖いよな(笑)。レンタルドレスの方は、けっこう人も雇ってたんよね? そこにヒロセはどれくらい介入してたの? 割と任せっぱなし?
どういう衣装を仕入れるかは一応いつも確認していたけど、基本は任せてた。採用の面接とかも、最後の挨拶だけはしてたけど、店長に決めさせてたし。でも最後の方は、女性のスタッフが増えたし、しかもFOR Uのサロンを隣のビルに移動させたことで、俺が毎日チェックもできなくなってしまって、その結果、わりと無法状態に……(笑)
一時期、すごかったよね。会社のスタッフ、ヒロセ以外の全員が若い女の子っていう。「ここ、夜のお店か?」みたいな写真、見たよ(笑)
そうやねん(笑)。ドレスショップも、いい時は月に百万レベルで利益があるときもあったけどね。もうちょっと俺がきちんと見るべきやったかなって、今となっては、ちょっと反省してる。

雨森も結婚する時に、衣装を借りています。写真はフィッティング中の1枚。完全にふざけていますね……

そして2次会の司会も、もちろん廣瀬くんに頼みました。ちなみに右の女性は、雨森の実姉(笑)
今はドレス屋さんも撮影用のスタジオも畳んで、もうちょっと業務を集約させてるんよね?
うん。プロデュース事業に専念してる。やっぱりドレス屋さんは固定費がかさむし、いい時はめっちゃよかったけど、赤字が続くこともあって。お店を構えるってことは、来るかどうか分からないお客さんに対して、先にスタッフのシフトを組まないといけないから。
確かに。そう考えると、飲食店とかって、すごいよね。
ほんま、そうやねん。最初に言った通り、結婚しない人が増えているし、結婚をしても式を挙げないみたいな流れになっているからさ。やっぱりブライダルの関連事業だけではあかんなって思い始めて。
それで、株式会社60になるんや。
それもそうやし、ずっとブライダルをやってきた中で培ったものを使って、BtoBのイベントプロデュースの事業をスタートさせた。例えば社内イベントのコーディネートとか、映像撮影とか。アメヤンのつながりからカタチになったノティオさんの10周年パーティーもそうやね。
なるほど。新郎新婦むけにやってきたノウハウを、今度は会社向けに売っていくってことね。
そうそう。今はそこに力を入れて、広げていってる感じやねん。

テーマ2『掛け算の可能性を秘めた、プラットフォームづくり。』

では、株式会社60はどういう経緯で?
これは「ノンバーバル」っていう会社の冨士くんっていう社長と一緒に立ち上げた会社。彼とはもともと飲み友達から始まって、「一緒に仕事はしたくないよね」みたいなことは言いながら、とはいえ何かをやれたら面白いなっていう思いはあって。彼にあって俺にはないもの、そしてその逆もあるから、うまいことやれたら面白いんちゃうかなと。
最初にヒロセたちがオフィスシェアしていた会社の社長さんよね。俺と同じようなブランディングとかクリエイティブをやっている。
そうそう。で、そんなことを考えている時に、俺のおばあちゃんが死んで、お葬式に行くことがあって。そしたら、なんか思うことがいろいろとあったんよ。
例えばどういうこと?
ん〜、なんか遺影も大したことのない写真やし、よく分からないままに焼かれて骨になって。これ、おばあちゃんは本当に喜んでるかなって。もっと元気なうちに、みんなが集まれる場所があったらいいのに、みたいな。
それは、いわゆる「生前葬」みたいなイメージ?
それと近いんやけど、生前葬やと「死ぬ前」みたいなイメージが強いやん? もっと元気なうちに集まってもらいたい。
なるほどね。
そもそも俺がブライダルの仕事をする中で、結婚式のいいところって人生で数少ない“自分が主役になれる日”であるってことじゃないかなって感じてて。やっぱり高砂席から見える景色って、なかなか壮大なものやん? ああいう感じで、自分の人生における各カテゴリの人たちが一堂に会することってないからさ。だからこそ式を挙げた方がいいと思ってて。そもそも一般人の俺らが、人生において、主役になれる日って3日しかない。それが生まれた日、結婚式の日、そして死んだ日やね。それを生きているうちにもう一つつくれないかなって。
そうやね。しかも3回っていっても、結婚式以外の2回は、自分に実感もないしね。
そうそう。それに結婚式をしない人も増えてるからさ。だから、みんなが集まれて、周りが「おめでとう」を言えて、本人は「みんなのおかげで、今の自分がいるよ」っていう感謝の気持ちを伝えられる場をつくりたい。そのポイントを還暦においたらどうかなって。
あ、そうか。主役になるってことは、みんなから祝福されて、ちやほやされるだけじゃなくて、「ありがとう」を言える場所でもあるってことか。60歳まで生きてきて、みんなに一斉に感謝の意を伝えることなんか、難しいもんな。例えば奥さんとかにはパッと言えるけど。
うん。そういう場所を作ったら面白そうっていう話を冨士くんに伝えたら「めちゃめちゃいい!」ってなって。彼はブランディングの専門やから、見せ方をつくって、広げることができる。俺は中身のサービスをつくることができる。そこから始まってん。
なるほどね。還暦やから「60」なんや。
そうそう。「みんなの還暦式」で商標登録もして。で、そのサービスを自分たちでプロデュースして、当日のコーディネートをして、っていうカタチでやるだけでもよかったんやけど、それでは目の届く範囲の人にしかサービスを提供できないし、どうせなら全国でやれるように、プラットフォームをつくろうってなって。
あ、そういうこと? ブライダルのパーティーみたいに、イベントをプランニング・プロデュースして、現場を回しますよ、みたいなことではなくて、さらに上位概念なんや。「ライセンス売り」というか。
そうやねん。いま考えているのは、全国のフリープランナーさんに業務委託して、広報的な業務はわれわれ本部がやるから、現場はやってくれっていうビジネスモデル。で、その紹介フィーみたいなものを1件あたり何%からもらうカタチを考えてて。
なるほど。面白いね。それって依頼はだれがするの? 還暦を迎える本人? その子ども? もしくは会社の部下とか??
それはまだ模索中かな。直近でやったのは、本人パターン。
ってことは、結婚式と同じやね。
そう。でも「私の還暦を祝うパーティーをやるから、会費1万円で、来てね」って、なかなか言いにくいかなっていう問題もある。
まだその文化が浸透してないだけに、難しいやろうね。
だからこそ、発起人となる第三者を周りに立てる必要があるかな。

衣装が赤いのは、やっぱり還暦だから?(画像は「みんなの還暦式」公式サイトから)

ちょっとした映画を観ているよう。ステキすぎる!

つまり還暦式っていうのは、これまでのブライダルの仕事で得た方法論を活かして行うんやけど、事業形態はまるっきり違うってことか。
うん。今までは自分の目が届く、そのちょっと先しかやれてなかったから、むしろ自分が動かないでもビジネスが回るような土台づくりみたいなものにトライしてみたくて。
「いつまで自分が司会をするのか」みたいなことを、ヒロセ自身も何年も前から言うてたもんね。それって、やろうと思えばできちゃうから、やってしまうやん? 俺も同じで、単価の安い取材の仕事なんか、本来、俺がやるべきではないんやけど、まあできるっちゃできるし。でも、社長が忙しいのはあかんってよく言われることで。
俺は自分の司会の数で言うと、多い時とくらべたら、めっちゃ減ってるよ。4分の1くらいになってるんちゃうかな。
それはいいことやね。でも、他の人が担当した時に、ヒロセと同じパフォーマンスが出せるのか問題があるやん。
そこやねん。「FOR Uってヒロセくんの色やね」って、周りの人からよく言われてて。早くそこから脱却したい。だから、知人の紹介とかではない限り、俺はもう前には出ないでおこうと思って。サイトから問い合わせてくれる人は、別に俺じゃなくてもいいはずやん? これまでの実績とかをみて、声をかけてくれているわけやから。
ヒロセ以外のスタッフがプランニングとか司会とかをしている時は、クオリティのチェックはしてるの?
うん、もちろん。それに俺が合格を出せた人だけを使ってるし。でもそれが100点でなくてよくて、俺の100点はその人は出されへんけど、同じように、その人の100点も俺は出されへんから。その違いは、個人のカラーってことでよしと思えるようになってきた。っていうか、そう思わないといけないってことにした。
自分のやり方だけが正解じゃないってことか。でも個々にカラーがあるのは前提としても、「これこそがFOR Uです」っていう核の部分はあった方がいいんじゃないの?
それはやっぱりお客さんと接する距離感。どれだけ親身になって、パーティーを一緒につくっていくかっていう部分になると思う。その上で、具体的なアウトプットは、違ってていいかなって。
なるほどね。じゃあ今後、ブライダルに関しては、できる限り周りの人たちに任せていって、株式会社60の事業みたいに、仕組みづくりとかの方にもっと頭を割いていきたいって感じか。
そうそう。60は掛け算の可能性を秘めてるから。
学習塾のKUMON、みたいなことよね。全国どこにでもKUMONはあるわけで。メソッドとライセンスを売る、みたいな。放っておいてもお金が回る仕組みをね。でも、まだ今の収益でいうと、ブライダルの方が圧倒的に多いんよね?
うん。9:1にもなっていないんじゃないかな。
じゃあその9の部分をヒロセ以外が回せるようになって、ヒロセは新しいビジネスを担当できると、すごいいいよね。
いまはそのために頑張っている感じ。ていうか、そっちに行かないと、細かい話ではあるけど、例えば子どもの運動会とかに行かれへん、みたいな問題もあるから。
あ、そうか。ウエディングの司会をやっていると、休日が仕事やもんね。
そうそう。そういうのも少しずつ考えてて。長男なんか、1週間くらい寝ているところしかみたことないし。俺が寝ている間に出ていって、帰ってきたら、寝てるからさ。

テーマ3『手掛けたいのは、ブライダルでも映像制作でもなく……。』

今後の展望としては、どう? 事業的にも人員的にも、いちど拡大して、今はぎゅっと集約させている感じやけど。また大きくしたい思いとか、あるの?
いや、それはない。組織として大きかった時は、やっぱりお金もふくめてしんどかったわ。
俺からしたらヒロセみたいに10数人のスタッフを雇っているだけですごいと思ってるけど、とはいえ、世の中には100人、1000人の会社もたくさんあるわけで。人とか事業が増えた時、何が問題やったと自分の中で感じているの?
ん〜、いちばんはコミュニケーション不足かな。あとは事業部ごとに、拠点が離れてしまったこととか。
物理的に距離がうまれて、目が届かなくなったと。
うん。さっきも言ったとおり、例えばドレス屋さんにしても、もっと口出ししてよかったかなっていうのも、いまは思ってる。
でもスタッフに対しては、できる限り、最後までやらしてあげたいし、自分で意思決定させてあげたいって思うよね。こっちから助けてあげようかなと思うと同時に、それでは自己肯定感みたいなものを無くしちゃうかなとも思う。
そうそう。特に少ない人数でやっている時は、それぞれのポジションに関しても、適材なのかが難しいところ。そもそも最近は、自分がトップ気質ではないようにも思ってきて。
ココに来て! ヒロセが??
うん。何て言うんかな……。本当にドーーーーーン! って成功している人って、後先考えずにとりあえず一歩目を踏み出してる印象があって。バカでかい会社の社長って、それほど頭がいいわけじゃないけど、人間力と一歩目の推進力がある人もいるから。
ヒロセはもっと慎重な感じってこと?
うん。石橋を叩いて、叩いて、割れた石を、さらに「ほんまに大丈夫?」って手にとって見るくらい(笑)。だからロクジュウの方は、ロープレをしている感覚もある。最終的に「ビジネスパッケージを買いたい人がいたら、どうぞ!」っていうのもしたくて、ブライダルをやっているBHFとは切り分けたかった。
まあプラットフォーム事業は、それほど原資がいらんからね。その分、お金を産まずに消えていく可能性もあるけど。じゃあ、組織としての規模を拡大するつもりは、今はないんやね。
うん。またそういう流れが来たらそうするかもしれないけど。この仕事をやり始めてからの約10年、来たものを全力で返していった結果で今があるって感じやから。そもそもブライダルって、基本的には“待ち”の仕事。お客さんに来てもらわないと、バッターボックスにも立てない。だから、ロクジュウみたいなものも必要やってん。
なるほどね。営業としての「あの〜、結婚式をしませんか?」っていうのは、なかなか難しいもんな(笑)
マジでそれ。でもロクジュウの方は、「こういうの、どうですか?」って言えるから。だから、この事業をスタートさせて、また楽しさが生まれたな。「1件とれた、やったー!」みたいな。
そっか。さすがにブライダルの方は、1件とれたからって、今さら「やったー!」とはならんか。
うん。 今はスタッフに「決まりました!」って言われても、「OK」だけやな(笑)
10年やってたら、そらそうなるよ。やっぱり組織っていうのは変化し続ける必要があるよね。人間、どうしても慣れるし、飽きるからさ。もちろん仕事やから責任を持ってやるけど、最初のパッションみたいなものを維持するのは難しいやん?
それは間違いない。
いま俺がやっていることを部下がやれるようになって、その次は、さらにその下のスタッフがやれるようになる。みんながちょっとずつ階段を登っていくっていう仕組みをつくりたいけど、まあ難しいよな。
そのローテーションを作っておけば、仮に誰かが抜けても、他の誰かが支えられるしね。

2018年に大阪の舞洲で行われた株式会社ノティオの10周年パーティー。01:04〜あたりに廣瀬くんと雨森が一緒に写っています。

BHFももう10年やけど、FOR Uがプロデュースした、ノティオの10周年のアウトドアパーティーもすごかったよね。あれがプロデュースできるって、さすがやなって思った。
いやいや、プロデュースってけっきょく縁の下の力持ちやからさ。あのパーティーに関しても、ノティオさんの希望がたくさんあって、それのバランスをとってカタチにしているだけ。2次会とか1.5次会も同じで、新郎新婦の話をしっかり聞いて、そこにある思いはこういうことかな? だったら、こういうことをしたらいいんじゃないかな? って考えて提案しているだけで。だから、そこで生まれてくるテーマとか、コンテンツも、別に俺がつくっているわけじゃないよ。
でも引き出す力がいるわけでさ。それこそがプロデュースよね。だって「テーマもイメージも、何もないです」っていう新郎新婦とか、企業もいるでしょ?
おるおる。俺も「何もなくてもいいよ」って言ってるし。テーマなんかなくても、パーティーはできるからね。

胸にささるキャッチコピーが記されたメッセージボードがお出迎え。

白を基調としたきれいなオフィス。新郎新婦との打ち合わせも、この場所で進んでいきます。
俺が今抱えている課題は、自分たちができることを、言語化してアピールすることなんよね。「何をやっているんですか?」って聞かれた時の答え方が難しくて。「プロデュース」って、曖昧やからさ。明確な成果物もないし。たとえば「アウトドアウエディングをやります」「じゃあ我々の取り分は00万円です」って言っても「え、そのお金は、なに?」ってなる人もおるから。
きちんと説明しないと、何のお金が伝わりにくいやろうね。
そうそう。やっていくうちに「ヒロセさんのところ、たった00万でいいんですか?」っていう人もいるし。例えばお茶を売るなら、「100円です」って言えば、「そうか」ってなるし、「1万円です」って言えば「めっちゃいいお茶なんですね」ってなるけどさ。プロデュースって、目に見えないものやし。そこを価値にできるように、模索中。
確かに、まずは言葉にすることやろうね。「我々は、〇〇をする、△△屋さんです」っていう定義をつくってしまって。
そうやねん。でもそれが本当に難しくて。言葉にすることで、制限もされるからさ。たとえば「企業サイトをリニューアルしたいんです」って相談されても、俺はできる気がしてる。もちろんデザインとかコーディングとか、専門技術が必要な部分は無理やけど。でも「どういう目的で、どういう人たちに、何を伝えるのか」っていうのは考えられるからさ。具体的なアプローチとしては、空間とか映像をつくることしかできないけど、もっと広く、課題解決みたいなことがしたくて。それを表現できる言葉がほしいな。
「ブライダル」とか「アウトドアウエディング」、「還暦式」とかでは、概念としては小さすぎるけど、だからといって「幸せを提供する」とか「価値をうみだす」とかでは、抽象的で独自性がない。上手なバランスの言葉を探さないとね。俺がやってるのは、まさにそういう仕事やから。
だから、ブライダルもロクジュウも、お仕事をする相手は違うけど、本質の部分は同じに感じているんよね。そこを説明する言葉をつくりたいな。それに、企業向けの事業で、映像の制作を発注されたとしても、「それももちろんやりますけど、それをやるだけでは……」みたいなもどかしさもある。
課題とかニーズに対して、本質的なソリューションにはなってないっていうね。俺らの仕事でもそういうことはあるよ。「サイトを作りたいんです」って、手段の部分で相談を受けるんやけど、「それは何のためですか?」「それを叶えるために、それが最適な手段ですか?」っていうところを一緒に考えたいからさ。
そうそう。感覚は同じやね。今はそこを考えるのが一番おもしろくなっているのかもしれへん。だからもう、パーティーのプロデュースをする人ではないんよね。結婚式、大好きやけど(笑)
コンサルティング領域は、ハマれば利益率も高いしね。さっきの話と逆になるけど、カタチがないからこそ、高い金額で売れる。お茶の1万円はやっぱり高いけど、ノウハウは、100万でも200万でも売れるから。確かに俺がやっていることと、手段は違えど、同じ考えやな。
だからアメヤンとも、一緒に何かやりたいんよね。今は飲食店とかの仕事もやりたくて。これだけパーティーをやってきたら、そういう箱を運営するノウハウもあるし、動画を切り口に攻めることもできるし。それぞれが持っているノウハウを生かしてやれれば、面白いよね。なんか、やろうや!
せやな。ちょっと作戦、練ろう!

(おわり)

SPEAKER’s Note

雨森武志
株式会社アイタイス 代表取締役

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高齢化社会へと突入している日本において、株式会社60の取り組みは注目を集めるかもしれませんね。どんな広がりを見せるのか、とても楽しみです。前述の通り、社長としては1歩も2歩も前を歩くヒロセですが、そんな彼でさえ、当たり前ですが、いろいろな壁にぶち当たりながら、ここまで来ているということが分かりました。しかも「自分はトップ気質ではないかも」なんてびっくり発言もあって、組織の規模が大きくなればなるほど、経営者としての悩みや精神的な負担なども加速度的に増していくんだろうな、なんてことも感じたり。これからも、身近な目標として、走り続けてね。必死に追いかけます!

廣瀬大輔
株式会社BHF 代表取締役

出会って約20年。いつも頻繁に会うってわけじゃないけど仲の良い友人の一人。そんなアメヤンとこうやって対談出来たのが嬉しかったなぁ。あのフリートークがこの内容になることに驚嘆!音声はお蔵入りで(笑)。 アメヤンには定期的にインタビューをしてもらって、自分を棚卸したい。

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