社長コラム

【月刊あめのもり】2021年8月「ついに言われた『パパ、○○○○』。その時、僕は……。」

雨森武志

雨森 武志

UPDATE 2021.08.31

みなさん、こんにちは。
締め切りである毎月末日の夜中に、泣きながらこのコラムを書いている、
永遠のカツオくん、雨森です。

ひとつだけカツオくんと違うのは、このコラムには、
最後の最後には手伝ってくれる波平さんもマスオさんもいないってこと。
大人になるって、辛いですね(涙)

さて、今日はお仕事っていうよりは、
すこしプライベートなお話をいくつか紹介するところから。

奥さんのために夕飯をつくった友人、O君。

まずはじめは、僕の同い年の友人、O君のこんな話から。

もう10年近く前でしょうか。

現在、某大手IT企業に勤めるO君ですが、当時は転職活動中で、
一時的にニート状態となり、1日を通してずっと家にいるということもあって、
外で仕事をしている奥さんの代わりに、夕飯をつくっていたそうです。

そして奥さんが帰宅。一緒に夕飯を食べていると、奥さんは言います。

すごく美味しい!

いいことですね。普段、料理をしない僕からすると、
それだけで「すごいな」と思います。

食卓でそんな賛辞をもらったO君。
その時の心境を、こんな風に僕に教えてくれました。

当然、嬉しかったけど、驚きはなかった。

なぜなら、こっちは時間かけて一生懸命につくったし、
何度も味見もして、美味しいのが分かっている状態で出しているから。

言わば「そら、そうちゃう?」っていう感じ。

どういう流れでそんな話になったかは覚えていませんが、
僕はこの話が大好きで、この10年間、ことあるごとに思い出しています。

トップに君臨する人だからこそ

少し切り口を変えながら、もう一つ同じような話をご紹介。

僕のことをよく知る人は周知の事実だと思いますが、
僕は2009年まで放送されていたラジオ番組『松本人志の放送室』が大好き。

全391回分の音源データのすべてをパソコンに入れていて、
放送が終了してから10年以上が経った今なお、時々リピートして聞き直しています。

「超」がつくほどの“放送室フリーク”なので、記憶に残っている話がたくさんあるのですが、
その中でひとつ、先ほどのO君の夕飯の話に少し似たエピソードがあります。

それは、この番組のパーソナリティである高須光聖さんが語ったとあるお話。

ちなみに高須さんは、松ちゃんや浜ちゃんと小学校からの同級生で、
3人目のダウンタウン」なんていう異名を持つ日本を代表する放送作家です。

どんな話を、かいつまんで簡単に説明すると……

ある時、TBSに入社したばかりのスタッフ(ちなみに『水曜日のダウンタウン』などで知られる藤井健太郎氏)から声がかかる。

局に行くと、そのスタッフから、「ずっとダウンタウンの番組を見てた」「今回、誰をアサインしてもいいと言われたので、真っ先に高須さんを選んだ」と、熱い思いを語られる。

20歳近く歳の離れた若手が自分を選んでくれたことに、いたく感激した。

てな感じ。自分に置き換えて想像すると、たしかに嬉しいですよね。

しかし、その話を聞いた松ちゃんは、
え? そんなことが、まだ嬉しいの??」と一蹴。

続けて松ちゃんが話したのは、、、

「俺たちは、ずっと日本のバラエティの最前線で頑張ってきた」
「誰でもアサインできる状態で、高須を選ぶのは当たり前」
「むしろそこで高須以外の名前が出るようなら、バラエティに向いてない」

といった内容。

そうです。ここで松ちゃんが話したのは、
僕の友人、O君と同じ「そら、そうちゃう?」です。
だって頑張ってやってきて、きちんと世間にも評価されてきたんだから。

一般的には「謙虚」と称賛されそうな高須さんの態度より、
場合によっては「傲慢」と言われそうな松ちゃんの姿勢の方が僕は好きです。

なぜなら僕は自負心を持っている人が大好きで、
むしろ謙虚でいることの方が簡単だと思っているからです。

例えばサッカー界の世界的なスーパースターであるメッシやクリスティアーノ・ロナウドは、
おそらく、サッカー少年や若手のサッカー選手から
何度も何度も「ずっと憧れていました!」と言われ、
その度に、口にしないまでも「そら、そうちゃう?」と感じたでしょう。
少なくとも「え? 俺を??」とはならないと思います。

同じようにイチローだって大谷翔平くんだって、
野球少年から「ずっと憧れていました!」と言われたら
特に驚くことなく「まあ、そら、そうでしょう」と思うでしょう。

キムタクだって、ジャニーズの若手に、
「ずっと憧れていました!」と言われたら、「そりゃ、そうだろうね」と思うに違いない。

もちろんすべて想像ですけどね。
「できる人こそ謙虚」なんて言われるので、僕の勝手な思い込みかもしれません。

でもやはりメッシやイチローたちが
え? うそん!! 俺に憧れてた?? そんな子、見たことも聞いたこともないけど!
まさかのまさか。嬉しすぎる!!」と思っているとは考えにくいわけです。

なぜなら彼らはみんな、それぞれの業界でトップ中のトップに君臨しつづけた存在。
大いなる自負心を持っていて然るべきだし、是非ともそうあってほしい。

僕はそう思います。

東京では『ナイトスクープ』で流れるやつです。

さあ、冒頭から2つの寄り道をしましたが、
やっとこさ、本論へと入っていきましょう。

みなさんはこのCMを見たことがありますか?

住宅会社『富士住建』のCMで、とある家族の日常を描いた物語です。

ここで主役として登場するのは、毎日毎日、家族のために忙しく働くお父さん。

いかにも真面目で、いい人そうな雰囲気は、
最初に出てきたマスオさんのそれとなんとなく似ていますね。

しかしこのお父さん。
マスオさんと違って、おそらく会社からの帰宅が遅く、
愛娘が起きている時間に家にいることができないのかもしれません。

そんなストーリーが進んでいき、クライマックスとも言える部分(なにせこのCM、2分もあります)、
愛娘から「パパ、大好き」と書かれた絵が渡され、(というか、書いたまま娘はもう寝ている)
奥さんから「ラブレターだね」と声をかけられます。

その絵を見たお父さんが見せる、嬉しさや誇らしさ、
「報われた感」みたいなものがにじみ出た、なんとも表現しがたい良い表情がとても印象的ですね。

お父さん、良かったね!(そしてお母さん、吉本新喜劇の島田珠代姉さんに似てるね!)

僕もはじめてこのCMを見た時は、けっこう感動しました。

ですが、もう見飽きました(笑)

というのも、これは完全に余談ですが、東京では日曜の夕方に放送されている、
僕のような関西人にとってのソウル・フード、、、ならぬ、“ソウル・プログラム”とも言える
『探偵ナイトスクープ』のスポンサーなんですね、富士住建さん。

だから、ほぼ毎週この物語を見ています。しかもこのCM、もう数年に渡って変わらない。
まあそれは別にいいんですが。

お父さんが娘に言われたい言葉ランキング、7年連続1位!(僕調べ)

とにかく、世の中の少女が放つ

パパ、大好き!

という魔法の言葉。

どれだけ頑強で、頑固者のお父さんも一瞬でやっつけられる
完全無欠、一撃必殺のキラーフレーズだと思います。

そして、言われちゃった。僕も。

さあ、ここからがついに本筋の本筋です。大変お待たせしました。

富士住建のCMのお父さんと同じく、
僕にも1ヶ月前に4歳になった愛娘がいます。

確か1年ほど前でしょうか。
そんな彼女が、ついに口にしたんです。
唐突に、おもむろに、なんの脈絡もなく。

パパ、大好き!

と。古今東西、すべてのお父さんが待ち望み、
心震わせる例のキラーフレーズです。

それを聞いた僕は、富士住建のCMのお父さんと同じように、
その6文字をグッと噛み締め、彼女が生まれた瞬間から今までを頭の中で振り返り、
言葉にならないたくさんの感慨を何とか口にしようと試みるもカタチにならず、
その思いは涙となって頬をつたい、ただただ彼女を引き寄せ、この腕の中に強く強く抱きしめ……

ませんでした(笑)

むしろ頭をよぎった感覚は、例のあれ。

そら、そうちゃう?

です。

だって、そら、そうでしょう。

僕は彼女が生まれたその日から今日に至るまで、
その健やかな成長を強く願い、また彼女の日々の暮らしが笑顔に溢れたものになるよう、
妻と力を合わせながら、全力で取り組んできました。

1年365日のうち、出張を除く約363日は一緒にお風呂に入り、
1年のほぼすべての週末を彼女を含む家族と一緒に過ごし、
一緒に歌を歌い、一緒にシャボン玉をつくり、
一緒にお絵描きをし、一緒に自転車の練習をしてきました。

また「保育園の〇〇ちゃんのパパはもっとかっこいいのに!」と言われないために、
自分なりに見た目に気をつけ(もともとの素材のクオリティには限界がありますが)、
いつかは必ず言われるであろう「パパ、くさい!」が、
できるだけ先の未来になるよう、毎日しっかりと体を洗い
寝る時にイビキで迷惑をかけないよう、絶対に太らない努力をしています。

さらに、どれだけ仕事で疲れて帰ってきても
(というか、年齢のせいか、毎日、倒れそうなくらいにクッタクタ)
子どもたちにはできるだけそんな素振りは見せず、彼女とその弟である長男を笑わすために、
若い頃から培ってきた人を笑わすスキルを100%出してきました。
2021年現在、世界で一番彼女を笑わせたのは僕なのです。(僕調べ)

もちろん他のお父さんと比べ、できること、やってきたことが
相対的に多いとは思いませんが、自分の中では、自信を持って言えます。
すべては彼女を含む家族のため。そう思って、毎日を過ごしてきました。

僕のような中小企業の社長の中には、
時に何よりも仕事を優先させてバリバリと働く人も多々見られ、
それはそれでカッコいいな! と憧れることもありますが、
僕は短期的にも、中長期的にも、そんなことはしません。
クライアントやスタッフには申し訳ないですが、
何よりも家族が優先。こればっかりは譲れない。

つまり、彼女にとって僕は、サッカー界だったらメッシだし、
野球界だったらイチローだし、ジャニーズだったらキムタク
唯一無二、絶体的な存在なわけです。

だから、「そら、そうちゃう?」です。

O君と同じように、もちろん嬉しくないわけではないけど、特に驚きません。感動もしません。
クールに、ただ淡々と「そら、そうちゃう?」です。

とは言え、さすがの僕も、彼女の成長に寄り添った度合いで、妻には敵いません。
でも世界で2位であることは疑いの余地がなく、
これはサッカー五輪代表の「4位」を超える立派な成績です。

だから、「そら、そうちゃう?」です。

この「冷淡」とも「傲慢」とも言える感情は、言わば「頑張った証」。
彼女がパパである僕のことが大好きじゃないわけがない。
ちっぽけながら、はじめて持ったとも言える自負心です。

つまり僕もやっと、O君や松ちゃんと同じように、
ずっと憧れていた「そら、そうちゃう?」を持つことができました。

そんな自負心を抱かせてくれた彼女に、心からの「ありがとう」を。
そしてこれからも「パパ、大好き」と言われれば、クールに「そら、そうちゃう?」と思えるよう、
ママと一緒に、君のすぐそばで、君を楽しませ、君の悩みに寄り添い、君の成長を見守るからね。

心から、ありがとう。

こっちは本文とはまったく関係ないですが(笑)、いい写真だったので(爆)。2歳下の弟君と。

そして最後に一つだけ添えておきましょう。

富士住建のCMのお父さん、「パパ、大好き」の絵をもらった時に、
そら、そうちゃう?」と思えるくらい、頑張れよ、と(←偉そう・爆)

はい、今日はここまで。

さて、まとめとして、すこしだけ。話を仕事に転換しましょう。

僕はクライアントに何かしらの成果を提供できた時に、
表向きは謙虚に「そうですか! よかった!」と喜び、感動している素振りを見せつつも、
心の中では淡々と「そら、そうちゃう?」と思える境地に至りたいと思っています。

例えば、ブランドサイトをつくり、問い合わせが増えたと報告がされる。
そんな時に、特に驚くことなく「そら、そうちゃう?」と思いたい。

また企業の理念を構築したことで、社員の一体感が増したと報告がされる。
そんな時も、同じく「そら、そうちゃう?」と思いたい。

繰り返しになりますが、「冷淡」とも「傲慢」とも言える
この感情こそが「頑張った証」だから。

それくらい、成果へとつなげることを当然のこととし、
クライアントの成長を当たり前のようにサポートしたい。
そしてそのために精進し続けたいと、今改めてここに記して、今日は終わりにします。

毎年、8月31日に泣きながら夏休みの宿題をしている全国のカツオくんたち。
大人になっても毎月それをやっている人もいるので、安心して、健やかに育ちましょう。

でもできるなら、きちんと計画的に進めようね(どの口が言っているのか!)

ではまた。

Editor’sNote

雨森武志

雨森 武志

五反田に小さなオフィスを構えるブランディング&クリエイティブカンパニー、アイタイスの代表です。

放送室 1

4,786(税込)

レビュー

松本人志と高須光聖がお届けする、TOKYO FM系列で放送中の深夜ラジオ番組「放送室」のCD化です。今作は、2001年10月4日の初回放送から2001年12月6日までの10回の放送を1枚ずつディスクに収録した<完全生産限定・10枚組CD-BOX>です。