目次

UPDATE 2020.01.29@Toyonaka

Vol.03

マイメンときどき、マイガール

Vol.03 豊中市議会議員
松岡あきみち氏

アイタイスの社長、雨森が、自身の友人の中で、自分らしさを失わずに生きている人や、クセの強〜いお仕事をしている人などをピックアップしてお話を聞く「マイメンときどき、マイガール」。3回目は、雨森の地元、大阪の箕面市という場所のお隣、豊中市の市議会議員を務める松岡くんです。「え? 市議会議員!? なんでそんな畑違いの人と知り合いなの?」と思ったあなた。また読み進めてみてくださいよ。

収録日 : 2019.12.06

対談メンバー

雨森武志
株式会社アイタイス 代表取締役

まずは原稿チェックでの修正の少なさにびっくり。
実直に取り組んでいるからこそ、
オフレコの部分がないんでしょうね。
前回の対談や僕の結婚式など、
この10年で松岡と会ったのはほんの数回。
それでもすぐに昔と変わらない
テンションで話ができるのは、
同級生だからこそではないでしょうか。

松岡あきみち
豊中市議会議員

あめやんと出会った母校では
学級委員のことを「総務」と言います。
1年生からその役職についた僕は、
それがそのままあだ名となり、
「ソーム」と呼ばれた三年間でした。
その名付け親であるあめやんが、
もう「ソーム」と呼ばなくなっているなんて……。
大人になりましたなあ。

はじめに

松岡くんと雨森は、高校の同級生。1年のときに同じクラスとなり、親交を深める。2人が対談をするのは、約10年ぶり2回目。

豊中市は、大阪府の市町村で4番目となる約40万人の人口を抱える巨大都市。『高校野球発祥の地』としても有名。

松岡くんは、その豊中市に生まれ、小中高のすべてで生徒会長を歴任。民間企業への就職を経て、当時最年少である26歳で、市議会議員に当選。

そんな松岡くん。前回の対談でも、「え、その話、大丈夫なの?」と、こちらがドキドキするくらいの内容をさらっと話してくれるくらい、サービス精神が旺盛。

同級生である2人は、互いを「松岡」「あめやん」と呼び合っている。

2人の会話は、当然タメ口。大阪弁も含めて、編集の手を加えず、そのままお届けします。

テーマ1『市長選落選から、会社員へ。そして再び議員へ戻った今。』

前に別のサイトで対談をしたのはもう10年前。そこからいろいろなことがあったよね。松岡は2年前の市長選に立候補した結果、落選。民間企業で働くっていう経験をすることになった。
そうやねん。議員を3期やった後、民間で働いた。選挙に負けて無職になったわけで。食うていかないとアカンからね。
市長選が終わったときに、また議員に戻って来る予定はあったの?
選択肢の一つとしてはあったけど、絶対ではなかったかな。そのままサラリーマンになるか、もしくは自分で会社をするか。そういう可能性もあったから。
それでも結局はまた議員になったと。その真意は?
やっぱり応援してくれている人がいたから。「何かやらないとあかん」っていう責任を感じてたんやろね。だって市長選に出たっていうことは、選挙で夢とか希望を語っているわけやん? みなさんに期待をさせたわけで。自分の発言に責任を持ちたいし、そのまま放っておけないっていう気持ちがあったんよ。
議員と市長では、やれることが違うわけで。今でも「やっぱり、いつかは市長に」っていう思いはあるん?
う〜ん、それは今はなんとも……。お金もかかるし、リスクを取れる年齢かどうかっていうのもあるから。
とはいえ、まだまだ若い方やろ? もちろん最年少で当選した時と比べると、状況は違うやろうけど。
うん。でも今では、豊中市にも僕より若い議員が2人いるよ。
さすがにもう若さが売りでもなくなってきたか。
なくなったねー(笑)

松岡氏、乗っけから、アガってます。たぎってます!

一方こちら、シャツの柄のクセがすごい……
民間企業を経て、意識的になにか変わったことってあるん?
あるある。僕はもともと、大学を卒業してからサラリーマンをやって、26歳で議員になったやん? その時は、議会の体制に迎合することなく、反骨心とかプライドみたいなものを持っていたつもりやねん。で、その姿勢が自分の中で陳腐化していったとは思ってなかったけど、十数年が経って、無意識のうちに変わってしまった部分があったと思う。
具体的にはどういうこと?
やっぱりさ、「松岡先生!」とか言われるわけやん? 最初は「いや、先生なんかじゃないですよ」って返していたけど、それもだんだん面倒くさくなって、訂正することもなくなったし。
あ、なるほど。どうしても周りの人たちが松岡を持ち上げるカタチになるよな。
でも議員という立場でいれるのは、僕が偉いわけからでは決してなくて、僕をそういう立場にしてくださった有権者の皆さんのちからがあってこそ。でも今回、その立場がなくなって、そうすると、すぐに手のひらを返されるわけ。普通の人に戻った瞬間にさ。
改めてその現実を目の当たりにしたと。
うん。だから、議員であるという事実だけを自分のバックボーンにしていたら、いつか大変な目に遭うなってことに気づけたね。
まあ12年間も、「議員さん」っていう、いわば普通の人と比べたら特別な位置にいたわけで、無意識のうちに麻痺していった部分があったと。でもそれに気づけたのはよかったやん。
うん。そうやねん。
10年前に対談したときは、伊丹空港に関する問題の話とかをしたよね。最近は、具体的にはどんな仕事をしてるの?
もちろんいろいろあるけど、この前、はじめて「住民監査請求」っていうのをしたわ。
住民監査請求……? それ、なに?
これは市民なら誰でもできるんやけど、「豊中市が、こういう損害を受けているんじゃないか」っていうことを訴えることができるねん。監査請求をされたら、監査委員と呼ばれる人たちが、60日以内に結論を出す必要がある。
今回でいうと、どんな損害があったん?
えっと、10月に平成30年度決算の報告があって、決算審査のために膨大な量の資料を見てた。29年度と比較して、どれくらい余ったとか、どれくらい足りなかったとかを確認しながら。
その中で「ここ、おかしいやん」っていうところがあったと。
うん。「中心市街地活性化の推進」っていう項目があって、そこに流用額が書かれててん。流用額っていうのは、初めに決められていた予算では足りないから、他のところからお金を持ってきたっていうこと。それが100万9千9百円になってて。
「何に100万もかかってん!」ってなるよな。
そう。調べてみると、豊中市の子会社である「豊中都市管理株式会社」っていう会社があって、急遽、その会社の不動産鑑定を発注したと。それに162万かかったみたいで、その予算を組んでいなかったから足りない分を流用したみたいやねん。そんなん、おかしいやん?

松岡氏が目をつけた数字を、実際に見せてもらいました。

ちなみに役所の決算は公開されているものなので、一般人が見ても、特に問題ありません。
不動産鑑定は、会社の金でやれよっていう話やもんな。子会社とはいえ。
そう。なぜそこに162万もの税金を投入したのか。で、実はこの会社の社長は豊中市の副市長で、3期連続で会社は赤字を出していた。経営的には苦しかったみたい。
つまり、会社運営のための金にしてたと。
間違いなくそうやわな。でもそれはアカンやん? 百歩譲って、豊中市が出してあげるとしても、なぜ当初の予算に組み込んでいなかったのか。僕はそれを見つけてしまったから、監査委員に「これ、見逃してないですか?」って請求した。で、11月末に意見陳述の場に呼び出されてん。まあ裁判みたいなもんやわ。その場で、僕が詳細を問うたんやけど、関係職員は、聞き取れないくらいの小さな声で反論をしてくる。しかも用意された原稿を棒読みしてるだけねん。でも、監査委員もそれを咎めるわけでもなく、涼しい顔で見てる。
え、つまりその意見陳述の場自体が、出来レースってこと?
絶対にそう。
なにそれ。結構サラッと言っちゃってるけど、ええの? わりと大問題な気がするけど。
いや、大問題やで。結果次第では、マスコミに言ったろうと思ってるもん。
へー。相変わらず、そういう感じで、問題提起をしていっているわけやな。松岡らしくて嬉しいわ。

テーマ2『プロデュース&ブランディングで高める街の価値。』

初当選したのが26歳。そこから約13年が経っているけど、当時と今とでは、考え方とか政策にどういう違いがあるの?
やっぱり、あの頃は青かったよね。現実を知らないから、青写真ばっかり描いてた。それと比べると、今はできること、できないこと含めて、もっと精密な設計図が描けてるかな。
昔はもっと無謀なことを唱えてたってこと?
まあね。でもわりと的確な提案もしてた。たとえば2013年あたりから、僕は「阪急の曽根駅と、地下鉄の緑地公園駅を結ぶバスを通そう!」って唱えてて。豊中市は、南北には電車が走っていて、北の方にはモノレールがあるけど、真ん中を東西に横断する交通機関がないから。それが2021年に開通することになったり。
へぇ。バスの路線って、バス会社が考えていることやと思ってたけど、そうでもないってこと?
バス会社が自分たちでひく路線もあるし、市町村から補助をもらって走らせている路線もあるねん。今回は豊中市が阪急バスに対して「ここに走らせて」ってお願いしてつくる路線やから、補助金が出る。提案したのが2015年やったから、そこから6年かかったけどね。
なるほど。そういう意味では、先見の明みたいなものがあったんやな。
うん。あった。自分で言うのもアレやけど(笑)

市内の中心を東西に横断する路線を!(画像は「豊中市公共交通改善計画」から)

ここにバス路線があると便利なことは、今は東京に住む雨森もよく理解できるとのこと。(同じく「豊中市公共交通改善計画」から)
あと、これも10年くらい前かな。市の財源を確保するための施策を講じないといけなくて、僕は「クラウンドファンディングをやろう」って提案してきた。それも、最近ではふるさと納税を利用したガバメントクラウドファンディングが世間では一般的になっているからね。遅いっちゅうねん(笑)。僕が言い出した時にやっていれば、日本初やったかもしれないのに。
なるほどね。それってつまり、若い頃は発想はあったけど、実現していくためのチカラがなかったってこと?
いや、まあ僕が言ったからっていう理由だけで実現されたわけではなくて、時代の要求としてそうなっていったんやけどね。今はもう「ただ税金をもらってそれを使っていればいい」っていう時代じゃないから。例えば、町の名産品は何なのか。どうやったら寄付をいただけるのか。そういったことを僕たちが考えて、提案して、それをもとに職員さんたちが取り組んでくれているわけ。あと、官民連携のひとつのやり方として、ソーシャルインパクトボンドっていうのもある。それは神戸市も2年前に実現してるんやけど、僕がそれを提案しても、議会の中では「は?」みたいなリアクションをされて。
それは、おもにベテラン議員さんたち?
そうそう。「また松岡が横文字の意見を出してて、ややこしいわ」って思ってるんじゃないかな。でも今は、そういった行政の新しい取り組みが実現されるまでの時間は、どんどん短くなってきている。
民間企業やったら、スピード感が重視されるのは当たり前のことやもんね。商品の開発やリリースが遅れたら、負けを意味するわけで。
そうやねん。僕も民間企業を経験して議員になったけど、落選して会社員に戻ってから、余計に感じるようになった。すぐに値段交渉をして受注をしていかないと、競合にとられてしまう。そういう競争意識が議会には欠如していることを再確認したわ。でもそれはある程度仕方なくて、やっぱり議員はどれだけやっても給料が一緒やから。
民間とちがって、自分の働きが評価されて、給料があがるってことはないもんね。
うん。やってもやらなくても同じ扱いを受ける。僕はお金がほしいわけじゃないけど、正当な評価がなかったら、議員たちは腐っていくから。良い政治家が生まれていかない。
でもそのために選挙があって、そこで評価されて、選んでもらえてるやん。
まあね。それで僕は結果をいただいたんやけどね。

バシッ! と問題提起をしている(ふりをしてもらいました。撮影用に……)松岡氏。
あと、豊中市って実は「古墳の町」やねん。いま残っているのは4基くらいやけど、古墳時代には36基もあったらしくて。この市役所のすぐ横にも『大塚古墳』っていうのがある。そこからは『大塚甲冑』っていう防具が出土していて、国の重要文化財にも指定されてるねん。知ってた?
いや、ぜんぜん知らん。
知らんやろ? なぜなら、重要文化財やから、温度とか湿度を適切に管理できる場所じゃないと、展示ができない。豊中市にはそういう施設がなかったんよ。だからモノはあるのに、展示ができず、ずーっと倉庫に眠ってた状態やった。展示スペースを持っている他の自治体に貸すことはあったけど。
じゃあ観光資源として活用できるのに、してないってことか。
観光資源になるかどうかは微妙やけどな(笑)。でも4〜5年前に、ついに展示できる場所が出来てん。『文化芸術センター』っていうとこに。
はいはい。曽根駅の横の?
うん。昔の『市民会館』の建て替えにあわせて特別展示室をつくってん。で、今年になって、その甲冑がやっとお目見えした。それまで何をしていたかというと、傷みがひどかったから、ずっと修復作業をしてた。
なるほど。じゃあ修復が完了して、ついに展示したってことか。
いや、ちゃうねん。「展示できる場所ができたからって、展示したところで、誰も見に来ない」って思ってさ。で、ちょうど『百舌鳥・古市古墳群』が世界遺産にエントリーしてたやん? その発表を待ってからにしようってことにしたんよ。
「古墳フィーバー」に便乗しろと(笑)
そう。っていうのも、豊中の古墳群は、百舌鳥・古市古墳群と時期を同じくして誕生したものやねん。しかも、出土している甲冑とか防具とかも質・量ともに肩を並べるレベル。学術的にも結びつきが深いとされてる。
へぇ。豊中の方は知名度は低いけど、歴史的な価値は変わらんってことか。なるほど。そういう仕事もやってるんやね。つまり、豊中市が持っている価値を見つけ出して、発表・発信していく。つまり、なんていうのかな。観光促進みたいな?
観光っていっても、そんなんじゃ人はなかなか来ないけどね。町の資産をどう活かすか。プロデューサーみたいな仕事じゃないかな。
それにブランディング的な要素もあるよね。「古墳のある豊中市ね」って思われるだけで、市民は住んでいることへのテンションがすこし上がると言うか、満足度が高まるというか。
そう。だから、この町がどういう歴史を踏んで今に至っているのかを学ばないとアカン。僕も『豊中市史』っていう全11巻の書物を10年間で少しずつ読んでいった。たとえばそれで知ったのは、日本初のショッピングセンターは豊中やねん。庄内駅のところにあるダイエーなんやけど。
すごいやん。そういった文化的な豊かさもあると。
そうそう。昔ながらの小売店の業態から一歩先に進んで、スーパーが出来上がり、さらにショッピングセンターへと進化していった。スーパーのLIFEも一号店は豊中やで。そこから今度はコンビニが登場してくるやん? ローソンの1号店も豊中。この市役所からも、すぐ近くやで。イオンの源流であるジャスコは豊中のスーパーシロが、名古屋の岡田屋、東京のフタギと合流してできた会社やし。
おお、豊中、やるやん!
それくらい「消費生活」っていう観点や、「暮らし」っていう観点で、最先端を走ってる町やったわけやわ。ちなみにドミノ・ピザの2号店も豊中やねん。これも「宅配デリバリー」っていう消費生活習慣における利便性に、早くから気づいていたってこと。
つまり「どうやったら暮らしやすさが向上するか」みたいなところに、もともと意識的やったってことか。
そうやねん。だから今は、そういう歴史を踏まえて、例えば、WAONでもPONTAでもいいけど、住民票を取得する時に、ポイントを使えたらいいんじゃないか? って考えたり。
なるほどね。面白い。
っていうのも、いま豊中市でボランティア活動をしてくれている人たちに、『ささえ愛ポイント』っていうのを付与してるねん。あと、省エネ活動をした人には『トヨカ』っていう登録商店で100円として使えるカードを渡してたりもする。でも発行数量を考えると、取り組みとしてはすごく非効率で。そもそも『ささえ愛ポイント』は福祉やのに、『トヨカ』は環境で、管轄もバラバラ。それに総務省から降りてきた『自治体ポイント』っていうのもあるし、ややこしい。だから僕は「統一せい!」ってずっと言い続けてるのよ。いずれだから、何かしらのポイント制度に統一されると思うよ。
松岡が唱えることは、だいたいカタチになるからな(笑)
まあ、時代の先を見てるからな(笑)。っていうか、歴史をきちんと学べば、「次はどうなる?」っていうことは、自ずと見えてくるから。
なるほど。「どこに問題があるか」なんて探さなくても、時代の流れとか、これまで培ってきた歴史を踏まえれば、次にすべきことは見えてくるんやね。

「撮影があるなら……」と、途中で気づいてつけてくれた議員バッチ。ちなみにネクタイは、彼のトレードマークでもあるラガーシャツを模したものとのこと。
あと豊中市って、高校野球発祥の地でもあるのよ。
うん。知ってる。それはわりと有名よね。
それに、サッカーとラグビーも、高校の全国大会の第1回は、豊中グランドでやってた。つまり「高校スポーツ発祥の地」とも言えなくはないんよね。ちなみに、今のびてきているスポーツといえば、なにかわかる?
え、なんやろ。今年で言ったらラグビーかな?
いや、違うねん。最近認知されてきたスポーツで、市場規模は世界的に見て1,200億くらいって言われてる。日本でも盛んやけど、1番は韓国かも。
えー、ぜんぜんわからん!
あめやんももう若くないねー(笑)。答えはね、『Eスポーツ』。果たしてこれがスポーツなのかっていう話もあるけど、我々の中ではその議論はもう終わってて、僕はスポーツやと認識してる。最近では新聞社が協力することで「全国高校Eスポーツ連盟」もできてるし、各高校でも部活動の支援を掲げて始めてる。
なるほど。確かにニュースとかでもよく見るよ。インターハイみたいな全国大会も開催されてるんかな?
そうやねん。だから、ぜひ豊中市もそこに乗っかっていこうと。なぜなら、ここは高校スポーツ発祥の地なんやから。それともう一つ。豊中市はコナミ創業の地でもあるねん。
へー。じゃあ「ゲームの町」と言えないこともないと。
うん。まあ誰も知らんけどね(笑)。だから、コナミさんに対しても、スポーツ発祥の地でもある豊中市と、一緒にEスポーツ事業をしませんかって提案していかないと。そうやって民間企業とのコラボレーションも活性化させていきたいと思ってて。例えばお隣の池田市なんかは、日清と組んで、カップヌードルミュージアムをやってる。それを横で見ながら指をくわえている場合じゃないから。
たしかに「〇〇発祥の地」とか「〇〇の市」みたいな冠があるだけで、印象は変わってくるよね。
うん。だから、さっきも言ったけどスピード感が大事で。「Eスポーツは果たしてスポーツなのか」みたいな議論をしている場合じゃないねん。そんなことをしているうちに、乗り遅れてしまうからね。

テーマ3『目標も構想も、とくになし! 1日1日を、市民のために。』

やっぱり、新しいことを始めようとすると、ベテラン議員たちの重い腰がネックになるの?
いや、そこだけでもないねん。例えば「豊中市として、Eスポーツの普及にチカラを入れます!」って掲げるやん? すると議会の中には「スポーツ振興課」っていう部署があって、そこからは「それって、うちの管轄ですか?」っていうことを言われる。それでも進めたとしたら、今度は教育委員会から「ゲーム依存になったら、誰が責任とるの?」って矢が飛んできたり。さらに『産業振興課』っていう部署もあって「コナミさんが豊中市と組めば、それだけで産業振興になるんじゃない?」とかも言われて。そうなった時に、「責任を持つから、やってみろ」って言えるのは、市長だけ。
なるほど。市長がGOを出さないと、なすりつけ合いみたいなことになるんやね。松岡はそういう決定権とか推進力がほしくて、市長に立候補したってこと?
そうやね。それで挑戦したけど、市民の選択は僕じゃなかった。市民は普段の行動をそこまで見てくれているわけではないし、仕方ないね。
まあ俺も含めて、市民は選挙にいったとしても、自分が投票した人が、当選後、どれだけ精力的に取り組んでいるかなんか、それほど関心はないもんね。じゃあ勝敗はどこで決まるんやろ。自分の分析での敗因は?
う〜ん。まず、投票率が低すぎるよね、約37%やから組織票がほとんどやし。あとは今の市長が、選挙の時に副市長だったっていうこともあるし、議会が応援していたっていうのもあるかな。
松岡が無所属であるってことが、選挙において不利に傾いてるってことはないの?
どうやろ。それは分からん。今後どこかの政党に属するかどうかも分からんし。局面ごとに判断していくことになるんやろうね。
じゃあ今回の市議会議員選挙では、何を評価されたがゆえに当選できたと思ってる?
正直いって、それもコレといった理由はないんじゃないかな。もちろん僕の活動をきちんと見た上で判断してくれている人もいると思うけど、選挙の瞬間でしか判断しない人もたくさんいるし。
まあ“選挙がうまい人”っていうのがいるからね。
うん。僕が初当選した選挙でトップ当選した人って、約4,500票を獲得したのよ。で、僕はその時2,791票。最下位の人の得票数が2000票くらいやった。だから1回目は下から数えた方が早かったよね。で、4年後の2回目。その時はトップ当選が5,500票くらいで、僕は5,457票。倍増したんよ。
おお! ギリ2位やん。それはつまり、4年間の松岡の活動を、みんながきちんと見てくれたからでしょ?
そうやね。で、そのまた4年後、3回目の選挙では6,024票をいただいた。ちゃんと上がってるやん? で、その時のトップ当選は約8,000票。1番少なかったのは2,000票くらい。僕が初当選した時に約2倍やった差が、4倍になってる。
それってつまりどういうこと? 何を示唆してるの??
きちんと取り組んできた人と、そうでない人との差が激しくなっているって考えられるよね。それでも、36位までに食い込めば、議員にはなれる。8,000票の人も、2,000票の人も、同じ議員バッジをつけるわけやからね。もうそうなるとね、「議員の数、半分でええわ!」って思うもん。
確かに多すぎるのかも。それは豊中以外でもよく言われてることやし。じゃあさ、今回8,000票でトップ当選した人は、松岡から見て、きちんとした仕事をしてきた人なの?
いや、新人やで。
えー! じゃあなんで?
維新や。(※本人よりお詫びコメントあり)
あ、なるほど(笑)
やる気、失せるよな(笑)(※本人よりお詫びコメントあり)。いや、維新の会がきらいなわけじゃないよ。僕は維新のことはむしろ好き。でも、僕にとっての6,024票っていうのは、3回目の選挙までに地道に積み上げてきたもの。なのに「新人です!」「維新です!」って言えば、その一時の評価だけで、票が集まっちゃう。ちょっとやってられなくなるわ(笑)(※本人よりお詫びコメントあり)。あ、でもこれだけは言わせて。現職では2位やったから。
じゃあやっぱりきちんと評価してもらえてるから、別にええがな(笑)。でも、その新人がトップ当選したことは悪いことじゃないやん? 大阪において維新が人気なのは、事実やろうし。問題は、この人がこの後しっかり働くかどうかやろ? そこがあまり結びついてないから、松岡も「やってられへん!」ってなるわけで。選挙の後やろ、むしろ大事なのは。
うん。確かにそのとおり。で、市長選挙をはさんでの4回目は、僕は8,379票をいただいて。ほんと、おかげさまです。
それは得票数では何番目?
3位やった。みなさんに「帰ってこい」って言われているってことかなと思ったよ。そう受け止めないと、やってられないっていうのもあるけど(笑)。いま4期目になるけど、もう僕より先輩って4人しかいなくて。年齢じゃなくて、期数でね。同期は9人。あとはみんな後輩になったわ。
完全にベテランやな。そら「先生」って言われるわ。議会では、期数と年齢、どっちで上下関係って決まるの? 1期目でも、年齢が上なら、偉くなるのかな?
人によると思うよ。民間企業やと、社歴の方が重視されるよね? でもここでは、期数は僕より下やのに、年上っていうだけで偉そうな人もいる。ちなみに今回も、幼稚園のときの同級生が新人で当選してん。もちろん同い年やから「松岡くん!」とか言われるけど、TPOはわきまえるべき。個人的な付き合いとしては「松岡くん」でぜんぜんいいけど、議場では「松岡議員」って呼んでほしいよね。

TOP当選がすべて新人であることや、当選ボーダーラインが下がり続けていること、さらにTOPと最下位で4倍以上の差があることにも、課題を感じると話します。とはいえ、松岡くんは、上がりっぱなし。すごい!
市長との関係はどうなの? バチバチしてるん?
まあ、バチバチしてるよ。でもそれは組織の構造上、当然のことで、なぜなら会社で言うなら、市長は社長。副市長が専務取締役とかかな? その下に部長・課長っていうのがいて、それがつまり豊中市役所になる。じゃあ市民は何かっていうと、お客さまであり、株主にあたるよね。で、僕たち議員はその代表だから、議会っていうのは、いわば株主総会。
お客さまの代表だからこそ、市長に対して「どうなってるんだ!」って問い詰めていく権利と義務があると。そらバチバチもするよね。今の市長は、選挙の時にライバルやったわけやん? 松岡はどういう感情を抱いてるん?
選挙が終わったらノーサイド。人としては、間違いなく素晴らしい人やと思ってるし、優秀な行政マンであることも間違いない。僕が初当選した時に彼は課長やってん。そこから次長、部長と進んで、副市長になっていくまでのプロセスも見てきているし。
なるほど。なるべくして市長になった感じかな。
うん。でも今の彼を支えていた議員たちは、今回の選挙で変わってしまってる。つまり、議会という株主総会の中で、彼を支持する人が減ってしまってるねん。
ちなみに、コミュニケーションはあるんでしょ? 「豊中市をよくする」っていう同じ目的を共有した、大きく言えば同じチームなわけで。「市長、こうやっていきましょうよ!」「そうやな、松岡くん!!」みたいな。
そんなん、ないよ。
あ、ないんや(笑)
こっちは監査請求しているくらいやからな。普通はそこまでいく前に、コミュニケーションとって折り合えよっていう話やん? とはいえ、対外的には豊中市として、ワンチームです(笑)
まあね。次の市長選は2年後か。まだどうするかは分からない?
分かるわけないよ。でも、おそらく立候補することはないんじゃないかな。お金もないし。
選挙するのは、お金かかるもんね。じゃあ今後の目標とか、将来の構想とかは?
それも、ない。今の所、本当にぜんぜんないわ。とにかく、1日1日の仕事をしっかりやることで精一杯やから。それが僕のよくないところなのかもしらんな。
そっか。選んでくれている人たちへの責任があるもんね。自分の未来なんかより、市民のみなさんのために、ってことか。って、いい風に書いておくわ。
うん、それで頼むわ(笑)

(おわり)

SPEAKER’s Note

雨森武志
株式会社アイタイス 代表取締役

.

これからどんどんベテラン側になっていって、みんなから「松岡先生」と呼ばれるようになろうとも、いつまでも尖った松岡でいてほしいです。相変わらず、ギリギリ(アウト?)なトークが飛び出して、本当に楽しかった。最後には、政治家っぽい握手もしてもらって、大満足! 定期的に話を聞きたいな。

松岡あきみち
豊中市議会議員

年の瀬にも関わらず、あめやんから約1週間前に“完全日時指定”の取材依頼が飛んできました(笑)。しかもカメラマンと2人、東京からマイカーによる日帰りの弾丸取材。目的に対する貪欲さは年齢とともに失われていくので、見習いたいです。同級生やから、思わず本音を引き出されたわ。次回は酒を飲みながら(笑)

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